わたしたちには帰遅スープ本がある

twitterでかなりつぶやいているのですが、今年買ったこの「帰り遅いけどこんなスープなら作れそう」(有賀薫著、文響社刊)というスープのレシピ本が、大げさじゃなくわが家の食卓を変えました。"スープ料理作家"の有賀薫さんが編集さんと一緒になってつくった、"超手抜き"レシピです。この本に掲載されているレシピはすべて3ステップで作れます。なので段取りがめんどくさいとか思う前に完成してます。そして、美味しい!スープだからおなかにたまるし、スープ一品でも満足できる。簡単だけれど、よく考えられ、練られたレシピです(いろいろ実感…)。

わたしも一人暮らしはじめた頃に料理の本を買いましたけど、結局長続きせず、自炊は半ばあきらめていました。結婚したあとも、妻の方が料理が得意なのでおまかせして、休日にたまにカレーやハンバーグを作る程度でした。全然料理をできないわけじゃなく、レシピを見れば、作れないこともない、でも料理を続ける意欲がどうしても沸かない。食べなきゃいけないのに。そういう人は多いと思います。でも、この通称(タイトル長いので)「帰遅スープ本」(わが家では"きちすーぷぼん"と発音)で、そんな料理を作るというハードルをぐぐぐーっと下げてくれました。本屋にいけば「簡単」と名のついたレシピ本はたくさんあると思いますけど、この本はもっと簡単です。構成としては、

・お湯をわかして、材量1をいれる
・材料2をいれる
・◯◯分経ったら、調味料1をいれてかきまぜる

くらいがほとんど。しかも、包丁を使わずにつくれるレシピも多数あります。野菜切ったりとか、そういうのもなし。代表的なのが、下の写真にある「鹹豆漿(しぇんとうじゃん)」。わが家では本当にしょっちゅう作っています。包丁がいらないばかりか、お鍋もいらないのです。スープ容器に材量を入れて、電子レンジのみで調理できます。作り方はぜひ本を買って読んでみてほしいのですけど、材量は豆乳、油揚げ、ザーサイ(なくてもいい)、酢、しょうゆ。トッピングでねぎ(ある方が美味しい)。これ、3分でできます。

中国や台湾の朝食メニューなだけあって、とても腹持ちがいいし、食べたあとの満足感がすごいです。

さっき材量に「なくてもいい」って書きましたけど、これは私見です。自炊でくじけがちなのは「全部きっちり材量をそろえないとダメ」という思い込みが原因の一つにあると思いますけど、この有賀さんのレシピはそこも考えて考えて、最小限に絞ってあります。だから最初は本当にレシピどおり作るのがいいと思います。でも、それでもなんども作っているうちに(簡単だからなんども作ってしまう)、「あ、これなくてもなんとかなる」とか、「あ、これはこの材量でも入れ替え可能かも」って気づきが出てきました。これは自分でも驚きです。

そういう、料理に対するコツとか勘みたいなものを最初の自炊から養うのは当然無理なんですけど、料理に対するハードルが下がることで、くりかえし回数が増えて、慣れが出て来るのが早かったです。この本を読んで、実践していると。読んでいてお気づきになったと思いますが、わが家にこの本が来てから、わたしも積極的にスープをつくっています。妻が仕事で遅いときや、休日にわたしが作ることが目にみえて増えました。

そうそう、スープ本なんですけど、お味噌汁の代わり以上におかずの一品として成り立つものが多いです。疲れて帰ってきても「この一品」だけ作って食べれば、満足感を得られるようになっている。さらにスープでは物足りないという人のために、ごはんにかけて食べるスープのレシピもたくさん載っています。

そのひとつが「こってり角煮風の豚汁かけ丼」。最近の日曜日夜のメニューはほとんどこれ+もう一つスープというぐらいリピートしています。わたしが作ったり、妻が作ったり。一食として十分満足できるボリュームの「スープ」なんです。わが家では、本のレシピにはない「玉ねぎ」を加えて、あと食べるときに七味をかけるというアレンジを加えています。極限まで絞った材量なので、自分で加えるということもできるんですよね(玉ねぎ入れた方がいいかもと言ったのは妻ですが)。レシピ自体に余裕があるというか。でも、根幹の部分はすごく練られているからこそできるのだと思うのです。

最初に超手抜きレシピって書きましたけど、手抜きすることに罪悪感を覚える必要がないっていうのは素晴らしいと妻が言ってました。これはわたしの解釈だと「簡単だけど調理する楽しみもある」でしょうか。鹹豆漿は5分、豚汁かけ丼は20分くらいでできますけど、それぞれの工程で調味料の分量計ったり、湯通ししたり、鍋をかけて煮立てたりという本当に料理の基本作業みたいなのが含まれているわけです。手順はすごくシンプルになってるけれど、少しの作業はある。その少しの作業が調理をするという満足感、簡単だけどちゃんと作ったよ!という満足感につながるようにできている。それが、ずっと料理を作っている妻にとっては「手抜きだけど手抜きじゃない!しっかりした美味しいものができる!」という感覚になり、たまにしか料理しないほぼ初心者の私にとっては「自分でも作れた!インスタント食品にお湯をそそぐ以上のことをやっている!料理している!」という自信につながっているように思えます。

この本が与えたインパクトというのはわが家にとっては、昨年秋に食洗機を買ったことに匹敵するものがあります。妻にとっては簡単に、でもしっかりした一品を増やす手段がものすごく増えたことが大きいですし、わたしにとっては料理をする機会が増えた(苦手意識とめんどくささがやはり少しあったので自信と積極性がついた)ことが大きい。そして、二人とも仕事で疲れて料理できないようなときにお弁当を買ってきたりしたときでも、一品だけ温かいスープを作って足すことで食事の満足感がものすごくアップするので、そういう点もありがたいです。本当に簡単だから疲れていても作れるんですよね。まさにタイトル通り「帰り遅いけどこんなスープなら作れそう」を実感することが多くて。

twitterハッシュタグで「帰遅スープ」「スープ365」を検索すると、作者の有賀さんや、この本を買って実際に作ったひとのスープがたくさん見られます。わたしたちのようにアレンジしている方もおられて、それをみて有賀さんも「私も真似してみます」というように反応されることもあって、本の世界からさらに「帰遅スープ」の世界が広がっているのがわかります。もちろん、この本にあるレシピそのままで救われた人も多いと思います。それでも十分だと思います。

この春、ひとり暮らしをはじめた、自炊は苦手だけど自分でつくったものを食べたい、という人にぜひおすすめしたい本です(ブログに書く前から周りに薦めまくってます)。

帰り遅いけどこんなスープなら作れそう 1、2人分からすぐ作れる毎日レシピ

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