選挙の日の雑感

たまたま、再読していた米原万里著の書評集「打ちのめされるようなすごい本」で紹介されていた本の文章を読んで、いろいろはっとさせられた「今日という日」でした。孫引きになりますが、掲載します。

(「凡庸な知識人」の概念規定とは)
『その著作は理論性にとぼしく、学問的緻密さも、人の心に訴えかける精気にも欠け、文体も思想もじつに平凡きわまりない』。

(しかし)『ある社会に広く深くよどんでいる意識は、むしろこれといって目立ったところのない平凡な人間によってつくられる』(のであって、これを今までのファシズム研究は見落としていた)以上、高田里惠子著「文学部をめぐる病いー教養主義ナチス旧制高校」(ちくま文庫)より

引用につづけて、米原万里は言う。「積極的な軍国主義者ではない、むしろ気弱な小市民に過ぎないのに無自覚のまま戦争に加担していった彼ら(山D註:旧制高校卒の官僚になれなかった批評者や翻訳者を指す)の精神世界を、病的と断じる著者(後略)」と。ここで米原万里が言う「彼ら」をわれわれは果たして嗤うことはできるのか、今日の日の世論をみて、より思いを強くしました。米原万里のような知識と教養で武装した歯に衣着せぬ物言いをする人を早くに失ったのは、いまでも残念に思います。