CSI:マイアミ・ラスベガス・NY合同捜査を見て(1)

CSIというアメリカのTV番組シリーズがあるのはご存じでしょうか。日本では「CSI:科学捜査班」として、CSやWOWOWで放映されていました。「科捜研の女」という沢口靖子主演のTVドラマがありますけど、あれの元ネタですね。刑事事件が起こったときに現場で鑑識の人が写真や証拠を集めて、それを科学捜査研究所で分析するというのは日本でもアメリカでも同じらしいのですが、CSIはもし科学捜査を担当する人が捜査権を持って自ら捜査できたら?という想定での架空の捜査部署の活躍を描いています。

10年くらい前から、大学時代の友人がCSIは面白いから絶対見るんだーと会う度に言っていたのですが、CSIは前述のようにCSやWOWOWで、うちにあるBSや地上波では見ることができませんでした。が、5-6年前にKBS京都(京都のU局)でCSIの放映が始まったのです。とびついて見ました。ですが、「なんか、思ってたのと違うし、大して面白くない。。」と落胆。

調べてみるとCSIはオリジナルのCSI(ラスベガスが舞台)の他に、マイアミが舞台のCSI:マイアミ、ニューヨークが舞台のCSI:NYがあり、同時期に三作品が並行して放映されていたこともあるとわかりました。わたしが始めて見たのは、そのうちのマイアミでした。

CSI:マイアミの何が面白くないのか、しばらく見続けて考えてみたのですが、1つは主役のホレイショー警部補以外、CSIのメンバーが全然印象に残らないこと。科学捜査班というからにはチーム戦なんだろうと思ったら、ほぼ彼一人の物語なんですね。始まりと終わりでスチャッとサングラスを掛けて決めのポーズを取るところばかり記憶に残る。もう1つ、重要なところは科学捜査なので、物証を集めて分析するのですが、実に様々なアプローチや分析法があって、そこが見せ場のはずなのに、そのシーンが面白くない。なんだろう、証拠のすべてが犯人につながるはずがないので、いきつもどりつや、なかなかうまくいかない葛藤とかあってもいいはずなのにそれがないんです。ようは1本道なんです。

ホレイショーやメンバー(誰一人名前がとうとう覚えられなかった)が現場を見て、状況を推理する→その推理から、こういう証拠があるんじゃないかと考える→その通りの証拠が見つかる→犯人とおぼしき人物につきつける→おわり。こういう感じで、科学捜査はあくまで小道具的な扱いで主じゃないんです。そこのところが、科学捜査というものに期待していた私には不満だったと思います。

それから年月が経って、結婚してからWOWOWに加入。するとCSIのオリジナルシリーズであるラスベガスが放映されていました。おそるおそる見ました。。。な、な、なんて面白い!!これが、これが友人が見ろといったCSI、これこそが科学捜査!感激しました。

オリジナルのCSI(以下、ラスベガス)を見てわかったのは、すべてマイアミとは逆だということでした。科学捜査班のメンバー全員の個性が際立っていて、それぞれに得意分野があることや、メンバーの組み合わせで事件へのアプローチが変わったりして、ストーリー展開が豊富。それぞれのメンバーにフォーカスしたエピソードもあります。そして、何より完全なる証拠主義であること。ラスベガス初代の主任であるグリッソムさんが繰り返し口にする台詞があります「人はウソをつく。証拠はウソをつかない」。どんな状況であっても、信じられるのは証拠であり、証拠がない限り、どんなに疑わしくても犯人を起訴できないというスタンスがつらぬかれています(実際、そうじゃないと困りますが)。もうひとつのCSIであるCSI:NYで見たのですが、若い捜査官が証拠分析に行き詰まり、「直感」に従って「こいつが犯人だ」と思い、尋問によるゆさぶりで追い詰めようとするシーンがあります。でも、主任捜査官にたしなめられます。証拠がないとダメだと(このあたり、ラスベガスとNYは徹底しています)。

もうひとつ、ストーリーが複雑で見ていて感情移入しやすいんです。どういうことかというと、特に分析をして、推理をしてを繰り返すところ。さきほど、マイアミは1本道と書きましたけれど、ラスベガス(NY)でも最後に行き着くところはエンディングで、そこにたどりつくまでは1本道です。ドラマなんだから。でも、視聴者はCSIのメンバーと同じように分析し、考えているかのような錯覚に陥ります。1本道じゃなくて、エンディングなんてないかもしれない...目の前には集めた資料、そして多くの分析方法、その組み合わせは無数で、決して1本道じゃない、見ている私(=CSIメンバー)が証拠を見つけなければ、と思わされる。これこそ、ドラマや小説、映画に共通する醍醐味ですよね。ラスベガスにはそれがある。マイアミにはそれがない。全部、ホレイショーが解説してくれる。

マイアミってなんで面白くないんやろねーと妻に話をふったことがあります。彼女はCSIはほぼ全部見ているので、わたしよりもCSIに通じています。曰く「演技が下手だから。ホレイショー役の人以外」。なるほどー、またひとつ疑問が氷解しました。

 

しかし、もうひとつだけ疑問がありました。ラスベガスと比較して、ここまでこき下ろしているマイアミはシーズン10まで続いているのです。なぜ、そんなに長く続いたのか?アメリカで見ている人達だって、他の曜日にやっているラスベガスと比較すれば、同じような見解に至ると思うのです。。

その答えは、標題にあげた「CSI:マイアミ・ラスベガス・NY合同捜査」という特別編を見て、わかりました。というか、それも妻が教えてくれたのですが。

(つづく)