吹田市の万博公園内にある国立民族学博物館は、国内でも最大規模の民族学博物館・教育機関(大学院)です。京都からだとやや遠いため一度も来たことがなかったのですが、吹田に引っ越してきてからとても来やすくなったので、じっくり見たいなーと思っていました。一度特別展には来たことがありましたが、まだ常設展を見たことがなかったため、きょうはそちらへ。*JAF会員割引がありました。
とにかく展示規模が大きいため、一度に全部見るのは不可能と聞いていましたので、見る箇所をはじめにしぼり、中央アジア・モンゴル・アイヌ・アメリカのみにしました。じつはこれでも結構欲張っていると思います。
個人的に使用するための写真撮影はOKなのが嬉しいです。三脚とフラッシュは禁止。
中央アジアの遊牧民のテント内部。外壁はフェルトで覆われていました。
壁一面に帽子の展示があり、足元にはブーツも。これは女性用ということですが、サイズがあえば冬用に欲しいなーと思いました。残念ながらミュージアムショップには帽子の販売はなかったです。。
弦楽器は本当に各地によって様々ですねー。正倉院に伝わっている螺鈿紫檀五弦琵琶などと原型は同じでしょうか?シルクロードを感じます。
こちらはモンゴルのゲル。中央アジアのテントとは外壁の素材が違いました。こちらの方が気候風土が厳しいからでしょう。風が入らないようになっています。ゲルの左にパラボラアンテナがあり、写真ではわかりにくいですが屋根には太陽電池パネルが乗っています。右手にはオートバイもあります。違和感を感じる方もいらっしゃると思いますが、ここは「民族学」の博物館であって、「歴史学」ではないので、過去の資料だけではなく現代の資料や現代の生活様式も展示されています。民族衣装の結婚衣装なんだけれど、ハートマークが入っていたり、文字の雰囲気がどこか現代っぽいなーと思うと2016年収集と書いてあったりしました。
ゲルの中は少しだけ入れるようになっています。家具や屋根の骨組みに描かれた模様が素敵です。
モンゴルの楽器といえば、馬頭琴ですよね。
そういえば、中央アジアはイスラム教ですけど、モンゴルはソ連による社会主義になるまではチベット仏教が主体だったのですね。同じ遊牧民生活でも意匠に違いがあるのはその影響なのかもしれません。
うってかわってアイヌの半纏です。この模様は何の意匠紋なんだろうなぁ。そういえば前回来た時の特別展「夷酋列像展」でアイヌの衣装や装身具はたくさん見ていました。
日本のコーナーも少しだけ見ました。現在の展示は各地のお祭りに関するものが多かったようです。これは遠野の鹿踊の衣装。なんだか異界のものを思わせます。
これはご存じ、弘前のねぷたですね。日本コーナーだけでも結構楽しそう(今回はほとんどスキップ)です。日本だから知ってると思うと案外知らない風俗の方が多そうです。
こちらは南米の衣装コーナー。動物の模様を描いた胴巻きが素敵!なぜか大きなスプーンが飾りとして使われています。
印象的だったのは南米などの工芸品のコーナー。ブラジルの木彫り彫刻や、ホピ族の彫金などは伝統工芸のように思われがちなのですが、じつは過去とは一切関連がない19世紀中頃から20世紀に入ってからの「新しい地元工芸」なのです。先に書きましたが、歴史学ではないので、こういう新しいものも「その土地の民族学」として研究・収集されているわけです。どういう経緯で新しい工芸がその土地に生まれたのか、がわかりやすく展示されていました。この視点は新鮮でした。古いものがよきもので、それは長く続いているいから良きものなのだ、というロジックを近頃の日本ではよく聞きますが、伝統と呼ばれるものはじつはそんなに古いものでも、継承されたものでもないというのは世界各地であるのだなということがよくわかりました。もちろん、それは古く長く続くものを大事にするいうこととは別のはなしです。
まだまだ見ていないコーナーが多いうえに、今日見た範囲もじっくりしっかり見るととても疲れます。情報量がものすごく多いから。一度に全部見るというのはやはり不可能というのが実感です。今日、妻が言っていたのですが、実際の生活の痕跡資料が多いから、そういうものが集中していることによる「圧」みたいなのがあって、少々しんどくなる場所もあったそうです。
お薦めのスポットではありますが、近くの人なら何度かにわけて足を運び、遠くの人なら地域を2つくらいにしぼるか、いっそ2-3日滞在して見に来ることをお薦めします。それだけの価値はありますよ(ミュージアムショップも充実)。