2017年、わたしの祇園祭

京都市民の夏はなんといっても祇園祭です。住む場所が吹田に変わっても年中行事に組み込まれています。実家の母などは若いときから何十回と行っているので、もう行かなくてもいいとよく言いますが、わたしは一人暮らしをしていた場所(2箇所)がどちらも山鉾が立ち並ぶ界隈だったので、意識しなくても通勤の行き帰りに自然と祭りが始まり、終わるまでの雰囲気を楽しめました。

 

祇園祭のメインは7/17の山鉾巡行と、その前日までの3日間の宵山ですが、京都市民に「今日は祇園祭やんね」と声をかけて「いや、祇園祭はそもそも7/1から始まって、一ヶ月続く祭りなので、うんぬんかんぬん」とめんどくさいことを返された他府県の方は少なからずいらっしゃると思います。。まぁ、メインの行事以外は京都市民だってそれほど注視していないのですけど、ローカルのニュースなどでは「稚児さんの八坂神社へのお参り」(山鉾巡行の先頭をゆく薙刀鉾に乗って神事を司る男子が八坂神社で官位を受ける)や「くじ取り式」(山鉾巡行の順番を決めるもの。くじ取らずで固定位置の山鉾もある)などの行事が放映されたりはしますので、祭りが徐々に始まっていくのを感じられるのは確かです。

昨年から一度の山鉾巡行が二度になり、前祭・後祭となりました。もともと40年前くらい前まではそういう形式でしたが、去年から復活しました。まぁ、たぶん観光客の増加を見込んでのことだと思うんですけど、地域の商店や消防・警察の方などは交通規制があるので大変です(道のど真ん中に山や鉾が建つので、物理的に通れない)。

さてさて、前置きはともかく、わたしの祇園祭2017は山鉾を見て回るのは最小限に、ちまきを買いにいくことをメインにしました。食べるちまきを模した、いわば立体御札というかお守りというか。一番上に載せた写真がそうです。各山鉾町で販売していて、値段も500-1000円と様々。それぞれにご利益が異なったりしますが、基本は魔除けで「蘇民将来之子孫也」と書かれています。蘇民将来がなんなのかは割愛します。

会社を定時で退社して、四条烏丸界隈へと足を運びます。最初の宵山日である宵々々山は屋台がまだ並ばず、交通規制は最小限で、歩行者天国もないので純粋に山鉾を鑑賞するには最適な日であると個人的には思っています。屋台が並ぶとやっぱり道が混むし、山鉾の雰囲気と合わないんですよね。。例年、この日だけは混まないと思っていたのですが、今年はすでに結構な人出でしたね。金曜日だったからというのもあるし、わたしが思っているようなことを観光客の方も情報として仕入れているのかも。

ちまきを買ったら即退散というのも味気ないので、いつも贔屓にしている山鉾だけ見ながら帰ることにしました。上の写真は一番最初にひとり暮らしをしていたころによく見に行った岩戸山です。山という名前が付いていますけど、形状は鉾(上に人が登って祇園囃子を演奏することができるようになっている)です。ちょうど演奏していたので、動画を取りました。雰囲気を味わってください。


岩戸山の祇園囃子その1


岩戸山の祇園囃子その2

さきほど、祭りが始まっていくのを感じ取れると書きましたが、祇園囃子の練習は町内にもよりますが、祭りが始まるはるか前の冬ごろから行ったりします。小中高生から中高年まで、町内総出です。界隈を歩いていると突然町会所から「祭りの音」が響いてきたりして、本格的に練習が始まる5、6月には窓を開けるとあちこちから祇園囃子が聞こえてきて、それはいいものです。住んでいないと味わえないお祭りの雰囲気ですね。

船の形を模した船鉾です。後部にはちゃんと舵も付いていますよ。昨年、もう一基「大船鉾」が復元されました。

祇園祭は八坂神社の行事ですが、山鉾それぞれが名前の由来となる別々の祭神を祀っています。これがちまきのご利益が異なる理由です。ここは伯牙山の町会所。その紋は琴柱(ことじ)の組み合わせで、わたしはこの紋が全山鉾の中で一番かっこいいと思っています。伯牙山は「中国の周時代、琴の名人伯牙とその友人鍾子期との物語に取材、伯牙が鍾子期の死を聞いてその琴の絃を断ったという故事をあらわしている」(町会のウェブより引用)が由来なので琴柱なのです。この故事って、腐女子界隈では有名でしょうか?芸事に関するご利益があることと、伯牙山の町会所は国重要文化財の杉本家住宅というところでして、杉本家所蔵の品々が見れるとあって、いつもたくさんの人が訪れています。実は二度目に住んだ場所に近いので、いつも前を通って通勤していました。

さてちまきを買ったのはここ芦刈山。ここも以前住んでいた場所のすぐ近くで、馴染みがあるのです。「謡曲『芦刈』に基づく。故あって妻と離れて難波の浦で芦を刈る老翁が、やがて妻との再会をはたす夫婦和合の姿をあらわす。」(同引用)ということからご利益は夫婦和合や縁結びのようです(縁結び関係だと他に保昌山も有名)。

山鉾に掛かっている織物を胴掛けといいます。芦刈山の胴掛けは獅子や幻獣たちが見られるので好きなんです。

胴掛けは各町の財力を結集しているのが特徴です。古くなってくると都度新調するので、ずっと同じものが使われているわけではありません。歴代の胴掛けは町会所で宵山期間中に公開していたりするので、それらを見て回るのも楽しみ方のひとつ。そういえば、この胴掛けにまつわる話が漫画「マスターキートン」にありましたね。お話の内容と関係ないですが、キートンさんが山鉾のことを「山車(だし)」と表現していたのが当時も今もひっかかっています(こういうところが京都人はめんどくさいって言われる所以)。

これでわたしの祇園祭2017はおしまい。山鉾巡行はたいがい平日の午前中なので、実物を目の前で見たことはたぶん、ものすごく幼いころにあったかなかったか。今年の前祭は巡行の月曜日が祝日(海の日)なので、見られなくもないですが暑いのでたぶん行きません。。KBS京都の中継を見るほうがいろんなアングルで見れていい、という京都人は実は多いはず。

そうそう山鉾巡行は山や鉾を人力で引くのですが、引き手が町内で足りないのでバイトが雇われることがほとんどです。たいがいは京都の大学生で、各町で伝統的にどこどこの学校のどこどこのクラブって決めているところもあります。わたしが学生時代所属した男声合唱団もお世話になっている山があって、毎回山を引く前の出発式で歌を歌うのが恒例になっています。わたしも引きたかったんですけど、毎年この時期って前期の試験なんですよね。。工学部だったわたしは試験も多く、試験勉強や試験そのものがあって、ついに一度も体験できずじまい(試験がなかった4回生のときは院試の勉強をしてた)。結構、悔しかったです。

今日は宵宵山で、18:00から歩行者天国四条通が人で埋め尽くされるうえに、この気温(猛暑日)ですから、今から行かれる方は熱中症に気をつけてくださいね!(ちなみに来週の後祭は歩行者天国も屋台もありません)