美術古本コント指圧読書(その1)

一月前くらいからやりたいと思っていたことを詰め込んだ旅行をしてきました。前回のサビニャック展からの間にも淀川混声合唱団の演奏会があったり、映画ボヘミアン・ラプソディを見に行ったりしていたのですが、どちらもどうも涙腺が緩みっぱなしで感情過多になってしまった上、風邪を引いてまる6日ほど寝込んでしまったので、気分転換がいるなーと思っていました。3連休の東京、案の定宿泊費は高いのですが、定宿に電話したらさすが良心的、いつもと同じ価格で6900円。そしてJALのホームページを見たら、直前割引(1〜3日前)の席が空いていて、なんと新幹線自由席よりも安い。これは実行するしかないと月曜日に決めて、23(金)から出かけて来ました。そういえば京都から吹田に引っ越してからは新幹線に乗って東京へ行ってないです。伊丹空港へのアクセスが楽すぎて。

さて、こういうスケジュールで考えていました。それで実際、この通りに行動しましたが、さすがに詰め込みすぎた。東京みたいな情報過多な場所で過ごすなら、午前1、午後1の予定くらいが本当は良いですね。

・1日目午前:国立新美術館ピエール・ボナール
・1日目午前:神楽坂かもめブックスへ行く
・1日目午後:神保町ボンディでカレー
・1日目夕方:新宿VACANTで「明日のアー」観劇(予約あり)
・2日目午前:田端ふしぎ指圧で施術を受ける(予約あり)
・2日目午後:初台のブックカフェfuzkueで読書(予約あり)
・2日目夕方:羽田空港から帰阪

 

国立新美術館へ行くのも何回目か覚えていないくらい、東京に来るときは必ず行っています。地下鉄六本木駅乃木坂駅からむっちゃ近いので便利なのと、B1にあるミュージアムショップが好きなんですよね。近隣に東京ミッドタウンもあるし、何しろ六本木ですから美術館帰りの食事に困らないのも助かる(高級なレストランじゃなくて、東京ミッドタウン地下の軽食コーナーが良いのです...親子丼とか)。

さて、ピエール・ボナール展は猫を見に来たといってもいい。このポスターの猫をたまたま見かけて、ああ白猫かわいい、うちの猫に似てる、これは行かないといけないとなぜか強く思ってしまったのでした。しかし、ボナールのことは全く知らなかったので、ポスト印象派っぽいし、猫以外の個性的なものはあるのかな?うーん全体として満足できるのかな...と若干不安もありました。でも、国立新美術館の企画はだいたい面白いのが多いし、ぶつぶつぶつぶつと脳内会議が直前まで行われたのですが、結局行くことにしたのは今回の旅行の目標を「やみくもに歩き回らない」と決めていたから。旅行に出ると異常に歩きすぎて腰に来るんですよね。探索好きで写真好きだとなおさら。そうすると二日目にすでに行動不能になっていたりするのでもったいないのです。行くと決めたら、そこへ行ってそこで時間を過ごすのが一番いい。旅というより旅行をするつもりであったので、偶然の何かを探す必要はなかったのです。

ボナール展、結果として思ったより良い展覧会でした。まず、猫や動物の描写がとてもうまいのですよねボナールさん。猫は特によくって、家族と一緒に食卓にあがってくる猫の絵が3点くらいあったのを何度も見返してました。それと構図が良いです。早くに写真に傾倒して、自身もカメラを持って撮影していたらしく、その写真も多く展示されていましたが、カメラの50mmレンズ的な視野で描かれたと思しき絵が多くて、それが新鮮でした。50mmレンズというのは一般的に人間の視野角と同じくらいと言われたりしますけど、実際に見たままを絵に書いてくださいと言われて描くと実際はもっと広角っぽくなると思うのです。なぜかわかりませんが、より広い範囲を絵に写し込もうとする気がします。風景全体を捉えようとしたのかもしれない。これは他の同時代の印象派などの絵を見て思ったことです。でも、50mmレンズのやや狭くなった視野角の構図というのはただ写せばいい写真が撮れるとは限らなくて、構図にひと工夫がないとぼんやりした印象になります。そこにボナールは挑戦したのかなと言う印象を持ちました。

ミュージアムショップで「伸びる猫」の手ぬぐいを購入。こういう実用品のミュージアムグッズが好きです。ポストカードは経験上だいたい死蔵してしまうので...。

蛇足ですが、国立新美術館では同時に東山魁夷展を開催中で、こちらは開場前から一階と二階でぐるんぐるんに巻かれた待ち行列がスタッフの誘導で形成されていて、えらい混雑ぶりでした。もはやブロックバスター化しているのか...意外。。と思いながら列を眺めておりました。ボナール展は開場直後ではやや混み?と思っていましたが、進むにつれて適度に見やすく、祝日にしてはゆっくり見れました。会場構成もしっかり練られていて、それも良かったなー。

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さて、次はかもめブックス。神楽坂の頂上付近(?)、地下鉄東西線の神楽坂の矢来口を降りてすぐ。新潮社の近くです。新刊を扱うセレクトショップ的なお店で、ジャンルごとに別れた棚の数はそれほど多くはありません。ギャラリーとカフェを併設。ちょこっと漫画もあります。京都の恵文社一乗寺店的なお店と思ってくだされば。大規模書店をゆっくりと見て回り、自分で探す本もいいですが、自分の視点から外れがちな本を誰かにサジェストしてもらうのもいいものです。なんといっても今回は「歩き回らない」がテーマですし。棚の位置が低いものが多くて、都度かがまないといけないがやや辛かったですね(前日からすでにちょっと腰に来ていたので)。

最初に目に止まって、立ち読みで気に入った文庫を一冊買い求めてから、神保町へ向かいます。坂を下って飯田橋まで行き、そこから御茶ノ水まで中央・総武線に乗ればすぐなんですが、神楽坂を下って写真を撮っているうちになんだか調子に乗ってしまって、「歩き回らない」を忘れてしまって、勢いで神保町までなら歩けるやんと思ったのが間違い。学生時代に東京に遊びにくるとよく飯田橋の東京国際ユースホステルに宿泊していたことから、この近辺の坂の風景、運河の風景が馴染み深くて歩きたくなったんですよね。

もうすぐ神保町ってところで、専修大学の創立の地みたいなところを見つけました。御茶ノ水駿河台・神保町近辺て大学多いですよね。明治・大正・専修・日大・東京医科歯科などなど。大学って自分の母校もそうですけど、広い土地にゆるく区切られた半自由的な内部の広がりをもつものをイメージするのですけど(東大とか早稲田がまさにそう)、このあたりはサテライトに点在するビルそのものが大学になっていて、何にも仕切られていなくて、ビルを出れば一般の人と学生の区別がないんですよね。街を行き来する人として同じ。「大学の敷地に守れていない感じ」が少し心細い気がします。自分だったら。大学が街全体に組み込まれているというか、それがとても不思議。

30分くらい歩いてようやく到着。おなじみの矢口書店や一誠堂、古書センターを見て一安心。今日はそんなに寒くないから、着込みすぎたのよくなかった。じんわり汗が。。とにかく、まずは腹ごしらえ、午後も1時を過ぎて2時くらいだから、ちょうどいい頃合いだろうと思ってボンディに行って見ましたら、一階裏手に並ぶ仕組みになっていた上、えらい行列で、即あきらめました。こんなに待てないよ...。あの狭い廊下の椅子に座って待つのは過去の話なんですね。そもそも靖国通り側から入れないようになっていました。久しぶりだから知らなかった...。

と、ぐるっと回って表に出たら、神保町ブックセンター。もと岩波ブックセンターが新しくなって、カフェ併設になっていました。岩波書店の本だけ扱うのは変わっていません。古本を探したあと、食事じゃなくて喫茶に来ようと思っていたのだけど、カレーが食べられるならここでいい!と入りました。いや、このチキンカレーなかなか美味しいです。ランチの人はお茶・コーヒーおかわり自由だし、カレーは大盛りもできますよって言われたし、いいところだ(大盛りにすれば良かった)。おひとりさま席もたくさんある!

結局、食事後、神保町でわりと本気で各店を回りました。この時点で夢中になっていて、歩き回らない鉄則を失念していて、かなりへとへとに。実はエーコの「薔薇の名前」の古本を探していたのですよね。文庫にならない上、ハードカバーが未だに増刷されているロングセラー。いっそ新刊を買おうと思ったのですが、上下巻に分かれているし、せっかく古本の街に来ているのだから「偶然の出会い」で見つけられたらいいなーと思って「探して」いたのですけど。だんだん疲れてきて、夕方からコントを原宿に見に行くのにいったんホテルに戻って休まねばならないので切り上げました。でも爪痕を残してやる!(神保町で何か買うくらいの意味)と思って、ぎりぎりの力で三省堂書店に飛び込んで、池田晶子の「考える日々」を購入(これも古本がないか探していたんです)。あと、「BIBLIOPHINICS」という書籍グッズの中にDINEXマグカップなるものを(これは本当に偶然)見つけたので、一緒に購入。そう、何か雑貨も買いたい気分だったのが、かもめブックスに行ったときにめぼしいものを見つけられなかったんですよね。それが三省堂書店で実を結んだので結果的に良かったです。写真に写っている「かめくん」はかもめブックスで買ったもの。オカヤイヅミさんの表紙に惹かれて。

ホテルに向かうために、三省堂書店から御茶ノ水駅までの坂がまたきつかったけど、頑張って上りましたよ。それにしても、御茶ノ水の坂にあるギター屋さんてこんなに多かったっけ?増えてないですか?10年前、20年前はこんなにあったっけ??忘れてるだけなんだろうか。

(続く)