合唱演奏会舞台撮影のための覚え書き(1)機材編

一昨日、大阪で活動するアンサンブルスピランディという女声合唱団の第三回演奏会に行ってきました。

http://spirandi.webcrow.jp/index.html ←合唱団のウェブ 

いつもは演奏会を聞く側ですが、今回は撮影スタッフとしてご依頼を受けての参加です。じつは昨年の第二回演奏会で初めて依頼をいただいて撮影をさせていただき、幸いなことに好評をいただいたので続けての登板となりました。同団の指揮者で作曲家の北川さんとは合唱仲間として旧知の間柄でしたが、どうして昨年ご依頼いただいたのかはよく覚えていません。わたしはかつて所属した合唱団の演奏会写真を数年続けて撮影したことがあり、そのことを耳に挟んでのことかもしれません。

わたしはアマチュアカメラマンで、普段は主に近代建築写真や街歩き写真を撮っていますが人物を中心に撮影する機会は全くないので、その方面のノウハウはありません。が、舞台撮影というのは同じ人物を撮影するポートレート(肖像やグラビア)とは違って、別のノウハウがいることがだんだんわかってきました。大した蓄積ではありませんが、友人知人の演奏会の撮影を依頼されたけれど、という方がもしいらっしゃったらそのノウハウが役に立つかもしれないと思い、少し長くなると思うので数回に分けて記してみようかと思います。

【使用する機材について】
・カメラ
わたしはSONYのα6300というミラーレス一眼をメインに、バックアップとして同じくSONYのRX100という機種を使っています。これらの機種を使うのは理由があって、撮影時にカメラが発する音が無音かそれに近いからです。

ミラーレスでない一眼レフカメラの場合、シャッターを押すとミラーが上がる仕組みですが、このミラーが上がる音が意外に大きいです。そのため合唱に限りませんが小さな音でも響きやすい会場での撮影には不向きと思います。一方、ミラーレス一眼レフなら良いかというとそうでもなくて、こちらはミラーの音はないけれどシャッターの音が目立ちます。カシャっていうあれです。ならどうすれば?最近のミラーレス一眼カメラの一部に静音撮影・無音撮影という電子的にシャッターを切る機能を持っている機種があります。オリンパスの一部のカメラ、SONYのα6300、α6500がそうです。この機能はあまりそのカメラの広告やパンフレットのアピールポイントの中では目立ちませんが、舞台撮影には重要です。

バックアップに使っているコンパクトカメラはOKなのかというと、こちらは無音ではないですがシャッター音がとても小さいです。カシャというよりもパチっという音なので聞いてみると目立ちにくい。そもそもミラーがないのと、シャッター機構そのものがサイズに比例して小さいので音も小さいのです。だから、連続で撮影すると響きやすい環境や演奏音が小さい場面では邪魔になる可能性があります。なのでバックアップにしています。

あと、昔のデジカメより最新のデジカメの方が向いています。これは主にISO感度を高く設定できるからです。舞台撮影は舞台照明があるとはいえ、屋外より暗いためISO感度を上げないとブレやすくなります。しかしISO感度を上げると一般的にはノイズが乗りやすくなります。最近のデジカメはセンサーの機能が向上していて、ノイズが少ないうえにISO感度をものすごく高く(6400から12500くらい。通常の屋外だと100とか400程度の感度を使う)設定できる機種が増えてきているので、できれば新しい方が良いです。

カメラの時点でかなりハードルが高いとうか選択肢が少なくなってしまいます。やっぱりここが重要なのです。

・三脚
カメラに望遠レンズをつけることになるので、その分の重さに耐えられる三脚が必要です。三脚を使うのはブレを防ぐことと、カメラマンが楽をするためです。手ブレ機能を備えたカメラであれば手持ちでもいける場合もありますが、カメラを抱えたまま1時間以上はある演奏会を撮影し続けるのは結構しんどいです。誤って落下させた場合に大きな音をさせてしまうのを避ける意味もあります。

あと三脚の機能的にクイックシューがついてると便利です。クイックシューとは三脚からカメラをレバー操作だけで簡単に取り外せる機能をもった部品のことです。通常はネジ止めなので一旦つけると取り外しにくいです。リハーサルの撮影などのときに舞台に寄って撮影し、本番中は定位置で撮影する場合に楽ちんです。

・レンズ
望遠レンズが必要です。単焦点望遠レンズよりズームレンズが向いています。コンパクトカメラの場合は通常は広角レンズが標準なので、これに望遠機能がないと撮影は難しいです。なぜ望遠が必要かはおわかりでしょうが撮影する場所から舞台が遠いからです。当たり前のことなんですが、演奏を聞きに来たお客さんの視界に入ってはいけないし、演奏中の人の視界でもなるべく邪魔にならない場所となると座席最後尾よりも後ろしかありません。なので、相当遠い。

その望遠レンズでどれだけ遠くが撮影できるかも重要です。撮影するホールによって舞台までの距離が変わるから。これも当たり前のようですが、200人まで収容ホールと400-600人、1000人規模のホールでは舞台までの距離がだいたい2倍から4倍くらい違います。自分が撮影するホールの大きさとどこから撮影するのか(撮影していい場所)を事前に把握しておかないと演奏者のアップ写真をお願いされていたのに、全体写真しか撮れないということもありえます。

スピランディの演奏会は前回は阿倍野区民ホールで今回は川西みつなかホールでしたが、収容人数的にも客席の形状的にも舞台がかなり遠くなっていました。前回使用したのは90mm(中望遠)で、これでは今回はたぶん全然アップが撮れないだろうと予想して、200mm(SONYのミラーレスは35mmカメラ換算で300mm)を用意しました。それでも1人1人のアップを撮るには足らないくらいだったのでした(カメラの裏技で解決)。

個人的にはこれ以上大きなホールだと、アマチュアが揃えられる機材での撮影はすごく難しいと思います。。

このあたりで区切ります。当たり前すぎてあんまり特徴のあることを書けていませんが、次回はもうちょっとノウハウっぽいことがつまった撮影編を書きます。

(つづく)

下位機種のα6000にはない無音撮影が可能なことと、α6500が出たことで中古相場も下がっていてお手頃です。

α6300にはないボディ内手ブレ補正機能があるのと、α6500よりもシャッター音が小さい(無音撮影を行わない場合)ので本当はこっちの方がおすすめ。1年前は発売されたばかりだったので高かったんですよ...

OLYMPUS ミラーレス一眼 OM-D E-M1 MarkII ボディー

OLYMPUS ミラーレス一眼 OM-D E-M1 MarkII ボディー

 

オリンパスのE-M5 Mark IIやE M-1 Mark IIにも静音機能がついています。わたしは以前はオリンパスのE-M5(初代)を使っていました。かなり古い機種ですが、静音機能(無音撮影)が使えたのです。当時はE-M5くらいしかこの機能はついてなかったと思います。なのでお値段的には中古のE-M5を探すのもありかも。ボディ内手ブレ補正もついていますし。