堀文子追悼展と動物たち

2019年2月に100歳で他界された堀文子さんの追悼展覧会@京都高島屋に行ってきました。じつは友人に勧められるまで、堀さんの絵を見たことはなく、そういえば実家の本棚でその名前をかすかに目にしたか...くらいの記憶しかなく。画業80年というのも驚きですが、近作に至るまで一貫した画風というものはなく、そのときそのときの画家の目に写った今現在を写し取るという作風は他にはないものでした。

図録の表紙にあるクリオネの絵、これは80歳をこえてからミクロの世界に興味を持ってからのもの。研究室でも使えるような倍率の高い、自前の顕微鏡で観察されていたようです。その顕微鏡も展示されていました。これらのミクロの世界を主題にした絵を見る前、動物や植物の絵を見ていたときに、画面の構成に不思議なものを感じたのです。そこにいる生き物たち、花たちがどれもがいきいきとして、どこかに中心というものがあるわけでない。このクリオネの絵のように。それでなぜだか「ああ、この人は顕微鏡の目を持ったひとなのだ」とふと思ったのです。その直後にばーんと顕微鏡の展示があって、自分でもびっくりしました。堀さんの経歴のなかに「東大農学部で作物の記録を2年間続けた」というものがあり、そのときに培われた透徹した目というものがおそらくあって、わたしが「顕微鏡の目」だと思ったのはそういうところなのかもしれません。冒頭の写真にあることばはまさに、自分のことを「不思議さ、美しさ、感動したものを記録する職人」であると。

堀文子さんは、その言葉も魅力的な方で、今回の展覧会でも絵と絵の間に短文が掲示されていて、そのどれもこれもが印象的でした。見ていたものはそれだったのか!と好奇心の秘密を垣間見るような気持ちになるものも多く。「群れない、慣れない、頼らない」を信条とされていたそうですけれど、そこから想像される強い言葉ではなく、あくまで平易で優しい言葉で書かれていて、むしろ言葉と言葉の組み合わせとリズムにその世界観が現れているように感じました。

たくさんの年代のたくさんの絵のなかで、見て最初に震えがきたのはこの絵です。「サミット」と名付けられた動物たちの集会。猫と一緒に映る若き日の写真が飾られていましたが、わたしは堀さんの描く絵の中でも、動物の絵がとても好きになりました。猫、狐、フクロウ、ケツァール、狼魚...。

見終わってから、ややぼーっとして、時折挟まれる堀さんの言葉を反芻し、帰路へ。途中で買い物がしたくなって、先週の発表会撮影でいただいた謝礼を使わせてもらうことにしました。その1、波佐見焼のお皿。natural69というお店(?)が企画デザインしたものを長崎の窯元で製作したそうで、幾何学模様のほか動物のデザインがたくさんありました。なかでも特に気に入ったバクを購入。写真は京都市営地下鉄駅ナカに復活したクリスピークリームドーナツ*で買ったドーナツです。

*数年前に京都市営地下鉄四条駅と阪急烏丸駅の間の通路に開業して、えらい行列ができていたのですけど、2-3年で撤退していたのです。改札内に場所を変えて復活していました。いつの間に...

買い物その2、ワオキツネザルのエプロン。最近、わたしのなかでバーチャルワオキツネザル*がブームでして、その影響でワオキツネザルを目にする機会が増えています。それに加えて、以前から料理をつくるときにエプロンないの不便だなと思っており、さらに今回の堀文子さんの動物画を見たことがプラスされての購入と相成りました。

*バーチャルワオキツネザルとは

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堀文子さんの展覧会、京都展の会期は4/10〜4/22と短いのでお早めに。そのあと、5/15〜5/27に日本橋高島屋へ、6/1〜7/21に新見市美術館へ巡回します(日曜美術館っぽくアナウンス)。