竹中大工道具館へ

連休の初日、新神戸駅近くにある竹中大工道具館へ行ってきました。以前から行きたいと思いつつ、神戸の地理をあまりわかっていなかったせいか、新神戸駅というのが三宮からすごく遠い、行くには坂をえんやこら登らねばならないというかなり間違ったイメージ(後者は間違いではないが、バスや地下鉄がある)があったせいか足が伸びずにいました。しかし最近、ようやく位置関係を把握。といいつつ行きは新大阪から新幹線に乗って新神戸に降り立ちました。自由席ならそれほど高くないし、三宮の人が多いところを経由しないでいいのは魅力だったので...。純粋新幹線駅である新神戸の駅に興味もあり。

竹中大工道具館新神戸駅の1階から左ななめ前のバス通り(2番のバスが走る)を50mほど登ったところにあります。景観の中にとけこんでいるので、ぱっと見は博物館と気づかない平屋の和風建築でした(BCS賞受賞)。

1階は企画展展示室で2019.4.30現在、「水車大工」展を開催していました。常設展示室はB1FとB2Fという構成。

学芸員さんの話によると、水車というのは水車大工と呼ばれる専門の職人が、基本的に現地で製作していたものですが、製作後のメンテナンスを考えて職人の作業を現地の人も見て、仕組みを学んでいたそう。歯車が壊れたからといって職人をすぐに呼べるわけではないので現地の人でも作れるように、道具も一般的な大工道具を使ったとのこと。写真の水車は復元模型ですが、各部が動くようになっています。水車による粉挽きはよく聞きますが、搗いて、挽いて、さらにまだ粗いものは粉挽き部の上部に持ち上げられて再度、挽きに回されるまで全自動(水車の動力のみ)でオールインワンになっているところがすごい...。

円形を作るのにこういった組み合わせで木をつなげていたと。

さて、地下の常設展示へ。

木工が始まったころの木材を叩いて割るための蛤型の斧?というかハンマーですね。展示は系統立ててあり、日本での木工の歴史の初期から近代までの道具の発展と、その時代の建築様式との関連で語られていきます。解説と展示がわかりやすく、また手を触れられる展示が多いのが特徴。ちょっと注意がいるのが触ってもいいものと、触っては駄目なものの違いが少しわかりにくくて、思わず手を触れそうになったりというのが何度かありました。でも、それだけ手を触れられるものが多いということでもあります。

粗削りのかんなくずと、削ったあとの木材。いわゆる引いて使う日本式の鉋(かんな)が発明される前は、釿(ちょうな)や槍鉋(やりがんな)といったもので整形していたのだそう。

時代が進むにつれて、建築も複雑化し、道具も専用のものが現れてきたという展示。ほぞを作るために使うノミがありますね。

時代を忘れましたが、ある大工さんの道具一式。

最後の宮大工と呼ばれた西岡常一氏の引いた図面や語録の紹介コーナーは、かなり興味を惹かれました。規矩術という木工加工のための技術(算術式)がびっちりノートに描かれています。

宮大工の棟梁としての言葉を本人の肉声テープで聞くことができます。

こういう木材の焼印のタイポたまりませんなぁ...。木の種類によって建築のどこに使うのが適切かが違ったりするらしく、楓、檜、蝦夷松、赤松、杉などの製材の違いの展示もあり。それぞれのかんなの削り屑も並べてあって、手で触ったり「匂い」をかぐことができます。木の匂いというと檜が一番知られていますけど、木によってそれぞれ違うんですね。固さが違うから、削り屑の形も違う。

これは「銘」の入った鉋の刃です。「嵯峨の秋」とありますね。時代が下る(江戸から明治)と大工道具の主に刃を作る鍛冶職人に名人と呼ばれる人が出てきて、茶道などにも似た道具のブランド化(といっていいのか)が進んだようです。各地の名人、名蹟(名前を受け継ぐ)がその作品とともに展示されていました。刀鍛冶が鍛えるのと同じ「玉鋼」をノミや鉋として打つことにこだわった人もいるようで、大工道具の世界がこれほど奥深いとは思いませんでした。鍛冶職人以外にも大工にも名人の系譜があるらしく、活躍時期が年表化されていました。

そうそう、日本の大工道具だけでなく、それらの伝来元である中国の大工道具や西欧の大工道具のコレクションと展示もありました。各地でよく使われる木の種類の違いが道具の違いを生んだのではないかという考察がなされています。

入場チケットは大工道具(数種類あるそう)

展示スペースは決して広くはないものの、体験コーナーが多くて充実した内容で、きっちり見ればゆうに1時間以上かかるうえ、かなり大工道具(木工)と建築に関する知識が身につくのではないかと思います。連休初日の午前だったからか、訪れる人はやや少なめ。でも、この展示の内容は建築を志す人の研修にも使えるほどだと思います(っていうかボランティアの解説員さんによると実際研修に来る学生さんと先生が多いそう)。小学生くらいの親子連れにも良い場所かと。大人500円、大・高校生300円、中学生以下無料ですし。GW期間(4/27-5/6)は無休だそうです。

お土産に買った「木の卵」。檜、杉、蝦夷松、槐、桜など数種類あって、当然ながらどれも違う一点物(1100-1200円)。

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