みんぱく特別展「先住民の宝」観覧

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文化の日らしく、国立民族学博物館特別展「先住民の宝」観覧。みんぱくの原点であり真骨頂ともいうべき特別展で、そのまま本館への展示へリンクしているのが素晴らしかった。

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展覧会パンフレットにあるように世界の国の数より民族の数の方が圧倒的に多いという事実は忘れてはいけないことだろう。以下、メモ的に。

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博物館という性格上もあるし、みんぱくの性質もあると思うが教育的展示方法に力が注がれているのを感じた。その一環として展示を巡るスタンプラリーがあり、多くの子どもたちが頑張って集めていた。展示ごとのクイズや「考えてみよう」という提示の内容は鋭い投げかけがされていた。一例を挙げるとグアテマラのマヤ民族の宝は代々受け継がれてきた織物とされているのだが、プリント技術で再現された安価なファストファッション(もちろん西欧列強資本)が現地で多く売られている。その文様はオリジナルの文様を明らかに剽窃しているのである。

アイヌの展示はゴールデンカムイに登場するシーン画とのコラボ展示でとてもわかりやすい。以前よりみんぱくアイヌの資料収集と展示を精力的に行なっており、その中でゴールデンカムイとの出会いは画期的だったと思う。道具や衣服をただ展示するよりも、実際にどのように使われていたのかを示すのにマンガは最適だし、裏返すとゴールデンカムイの作者野田サトル氏の緻密な取材としっかりした文献参照が伺える。

台湾に先住民タオ族がいることは知っていたが、彼らが居住する島に低被曝核燃料が長年貯蔵されており、そのことを巡って、現在も台湾政府との間に深刻な問題を抱えていることはこれまで知らなかった。そもそも彼らが先住民として認められて、過去の差別や迫害を台湾政府が公式に謝罪したのは蔡英文政権になってからのことで、ごくごく最近のことである。

欧州、とりわけ北欧においてトナカイを放牧するサーミ人は複数の地域にまたがる先住民であり、一部の合唱人には知られているヨイクは彼らの音楽文化であり、現在その文化は広く世界へ発信されている。北欧の天気予報や道路標識はサーミ語が併記されているところもある。1970年代から初等教育サーミ語で行われるようになったとのこと。これらは北欧各国に公式に存在するサーミ議会による政策である。先住民の生活地域と国が一致しないということを解決するためにかなりの労苦があったことが伺えた。

ネパールの先住民族は民族ごとにカーストに分けられ、支配者層によってヒンドゥー教を国教として押しつけられて統治されてきたという。先住民民族による協議団体が発足し、その働きもあってネパールが非宗教国家と宣言したのは2006年。これもつい最近のことである。

現在、支配者層の枠組みの中ではあるが法律という制度によって先住民であることを認めさせ、自治権を得ている民族が増えている。これらは何も古い話ではなく、ここ10-30年くらいの出来事であり、現在なお進行していることでもあるのだ。

特別展は12/15まで開催。ミュージアムショップはGO TOの地域クーポン(紙)が使用可能。館内レストランはリニューアルのため10/31から休業しているのでご注意を。

https://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/20200319takara/index