日々のうつわ

 

子どものころから陶磁器の美しさに魅せられています。これは多分に母の影響というか、実家に普段からいい陶器がそろっていたのが大きいと思います。母の叔父が清水焼の窯元で、そのせいか母は無類の陶芸好き。あちこちの旅をしては今もその土地の陶器を買い集めています。家族旅行でも自然と陶器屋さんに入る機会が多かったです。

実家を出たときに、自分の食器を買いそろえることになりましたが、なにしろ独身だったので5枚一組の皿などは買えず(使う機会がないし、置き場所もない)、1枚単位で買える皿や湯飲み、茶碗を少しずつ買いたしていきました。あとは、実家から少しずつ分けてもらっていました。わたしの年代の人がどれくらい陶器を買うかわからないのですが、あまり高いものを買っても使いづらいので、1000〜3000円くらいのものが多いですね。

総菜とか弁当を買ってきても、良い皿にちゃんと盛りつけるだけで美味しいものに見えるのが不思議です。あまり、他の人に押しつけるつもりはないですが、紙皿とかプラスチックの皿で食事を取るのは少し抵抗があります。別にそのことで外食の店を選んだり、アウトドアで陶器を使えとかは思わないですよ。でも、良い皿を使っているお店はたとえチェーン店でも好印象を持ってしまいます。

良い皿の定義は、じぶんのなかでは造形や色のバランスが取れていて、食事を引き立ててくれるというくらいのもの。うまく言えませんが、こだわりはあるけれどこだわらないって感じでしょうか。陶器に興味のない人からすると、その境界はわかりづらいと思います。変に高い皿をありがたがったりしないです。好きなものは好き。嫌いなものは嫌い。でも、良い皿はそれなりに高いです(陶器市とかで安いときを狙う)。

上の写真の陶器は、なんの変哲もないカレー皿。無印良品で買ったものですが、手に取ったときの重み、その丸み、そこに盛られるご飯とカレー。ひとめ見ただけでそれらが想像できてこれは良い!と直感して買いました。独身時代、一時期、無印のカレーばっかり食べていた時期があって、その時に買ったと思います。1500円くらいだったかな。今でもカレーやチャーハン以外に、野菜炒めとかを二人分盛って取り分ける皿(わが家は個々人に予めよりわけしないスタイル)として重宝しています。

 

こちらは、松江に旅行に行ったときに買った島根県の出西窯のうつわ。4000円弱だったかと。出西窯はいわゆる民芸の皿なので、安くて使いやすいです。この皿は深めで口が広いので、サラダや煮物のときによく使います。色合いがとてもいい。皿の模様は一枚一枚違うので、買うときは在庫全部の中から好きなものを選ばせてもらいました(無理にお願いしたのではなく、陶器屋さんはたいがい選ばせてくれます)。

陶器が好きというと、ちょっとスノッブな感じを受けたり、美味しんぼの世界のような美食家だけのものと思って敬遠する人はいると思いますが、日常の生活のなかに宿るとても小さくて身近な美であると考えてみてほしいです。同僚の中には陶器は割れるから、という理由で全部プラスチックの皿を使っているという人が居ますが、それではやっぱり味気ないですね。食事は食事、と割り切ることはむなしい。食事を取らずに生きていけない以上、いつも楽しみがある方がいい。その手助けをしてくれるのが、良い陶器、良いうつわだと思うのです。

お気に入りの陶器が割れたときは、そりゃ悲しいですけどね。