小鹿田焼(おんたやき)の皿

先週、国立民族学博物館(通称:みんぱく)で開催されている特別展「工芸継承」を観覧した帰りに、同じ万博公園の敷地内にある日本民藝館(大阪)で陶器の皿を一枚買い求めました。大分県日田市の小鹿田焼(おんたやき)といいます。 

その存在を知ったのは、それに先立つ一週間前でして、知りたてのほやほや。阪急百貨店の梅田店で九州物産展を開催していて、電車で中吊り広告を見たら、長崎県波佐見焼と一緒にこのお皿がどーんと載っていたのです。ひと目ぼれみたいな感じになりました。アンモナイトの化石のような細かい線模様が中心に巻かれるように続いているのが、たまらなくて。よし絶対物産展に行こう!皿買おうと思っていたのですが、いろいろあって心身ともに疲れていて、梅田の人混みにでかけるのが億劫になってしまって、あーもう会期が終わるなー仕方ないなーと思っていました。

それでもどこかへ出かけたい欲はあったので、それほど混んでいないであろう(もったいないことですが)みんぱくへ行きました。特別展を見たあと、日本民藝館ミュージアムショップは民芸運動に関わった陶器を売っていたことを思い出したのです。以前、島根の出西窯の黒釉の陶器をここで買ったことがありました。広告で見た小鹿田焼民芸運動に関わったかどうかは知らなかったのですが、写真を見て、ああこれは民芸の皿だというなんとなく確信めいたものはありました。はたして、そこには小鹿田焼の皿が大小様々扱われていました。

わたしが購入したものは普通の小皿より少し大きいかなというくらいで、一枚1500円と求めやすい値段でした。大皿でも3000円くらい。菓子皿かパン皿にしようと思って買いましたが、少し浅く凹状になっているので、汁気のあるおかずの皿としても使い勝手がいいことが使い始めてわかってきました。

試しに明治のカールを盛ってみたらすごく良い雰囲気になりました。twitterでも書きましたが「南蛮渡来のかある」という趣。

豚の生姜焼きを盛ってみると、ちょっと「暮しの手帖」風になりました。

ところで、翌日、友人が私のtweetを見て物産展の方に皿を買いに行ったらしいのですが、アップされた写真を見ると似ているけれど微妙に模様が違うのです。友人のものは模様の線が少し太く全体的に素朴な感じがし、比較してわたしのものは線も造形もどことなくシャープに見える。なんと、友人のものは「小石原焼」という別の焼き物でした。どちらの陶器も同じ日田市に窯元があり、小石原焼は小鹿田焼の源流なのだそうです。注目されたのは小鹿田焼が先(柳宗悦が著書で取り上げた)で、その後源流である小石原焼にも目が向き始めたとのこと。なお、民芸運動は昭和初期の話ですが、どちらも窯元自体は17世紀後半〜18世紀前半から存在していたそうです。対して、先程ちょこっと書いた出西窯は民芸運動とともに興った"新しい"窯ということになります。うーん、まだまだわたしの知らない焼き物が全国にはあるなーということがわかったエピソードでした。

 

*工芸継承展については下記tweetをしています

tweetに書き忘れたのですが、この展覧会は「触ることができる展示」が多くて、構成自体も過去見てきた工芸の展覧会とかなり異なっていました。体験型というべきか、観覧者を工芸を鑑賞するのではなく、作成する側の世界に没入させるような非常に意欲的なものを感じました。展示自体がそういう趣旨だったからでしょう。推測ですが、これには国立民族学博物館の准教授で全盲広瀬浩二郎さんの影響が大きいのかもしれません。本館展示の一部に「目をつぶって手の感触で造形を感じる」展示があるのです。