「女の子は本当にピンクが好きなのか」感想

ライターの雨宮まみさんの書評を読んで購入した本「女の子は本当にピンクが好きなのか」(堀越英美著)。イントロダクションから目を見開かれる内容ばかり。ピンクという色の持つ社会的な意味の変遷を欧米日本それぞれに歴史をひもといていく社会学の著書。

 女の子とタイトルにありますが、色によるジェンダーの規定というか、押しつけのような話は男性にとっても無視できない内容です。子どものころ、赤色や暖色が好きなのに「赤は女色〜」と小学校でいじめられたりした経験のある男性は少なくないのでは。わたしもかなり大人になるまで、青色や寒色が好きなんだと思い込んで、赤色などを身につけることに「抵抗」を覚えていて、あれは呪縛だったなーと思います。

 この本の2章では欧米でのアンチピンク(色による押しつけへの反抗)の状況を取り上げているのですが、これがまた考えさせられます。2章の主役は工学部出身の起業家女性たちです。少し前にAKB48の例の歌「アインシュタイン〜」が物議を醸しましたが、あの歌詞は仕掛けた人の思惑(炎上狙い)がどうであれ、やはり前時代的で的外れ、女性の気持ちを代弁するようなものではないのだ、ということがこの章を読むとよりはっきりと意識されます。また、わたしは工学部卒ですが、あのころ女性の工学部生の生きづらさなどをを思いやったり理解する気もなく、「女性少ないよ〜」と嘆いていたのは情けない限りと、この本を読んで思いました。

 もうひとつ、この2章ではアメリカの STEM教育熱の高まりとアンチピンクが結びついているという興味深い報告が述べられています。STEMとは、Science, Technology, Engineering, Mathematicsのことで、いわゆる理系教育ことですが、オバマ大統領の就任以来、これが教育政策として進んでいて、特にこれまでこの分野での活躍が少なかった女性技術者の比率を高める狙いがあるそうです(男子よりも女子の方がやはりこの分野への関心が低いため、それを強化できれば、国内STEM人材を増やすことができる)。

後半の章では日本でのピンクと女子の現状、ダサピンク現象についても述べられており、ここでも幅広い事例と考察が展開されているようで、読むのが楽しみです(まだ2章までしか読んでないのに、興奮して筆をとってしまった)。 男性、女性問わず、お薦めの一冊。

ちなみに一緒に写っている「街角図鑑」はDPZライターの三土さん編著による、見て読んで楽しい図鑑。土木系や街歩き、路上観察が好きな人向けです。こちらも男女問わずお薦め!

女の子は本当にピンクが好きなのか (ele-king books)

女の子は本当にピンクが好きなのか (ele-king books)

 
街角図鑑

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