スペイン旅行記(11)君よ、サン・パウ病院へ行け

 前回の旅行記はサグラダファミリアまででした。

www.dempa-anshitsu.org

 かつてバルセロナへ旅行されたことのある方で、サン・パウ病院を訪れたことがある人はどれくらいいらっしゃるでしょうか?そんな名前、ガイドブックで見たことがないなーという方も多いと思います。1997年、カタルーニャ音楽堂とともに世界遺産に指定されたサン・パウ病院(サン・パウ モダニズム区域)は、4年間の修復工事の後、2014年2月から一般公開が始まったとのことなので、観光できるようになったのは実はつい最近のことなのです。まだ、そんなに国外での知名度は高くないと思います。

われわれも出発の直前に知り、どういう場所なのか詳しいことは全く知らず、モダニズム建築が見られるだろうから、サグラダファミリア見学の後の余韻冷ましくらいのつもりに考えていました。ところがどっこい、そこにはここが地上の楽園かと思われるほどの美しい別世界が広がっていたのでした。断言してもいいですが、サグラダファミリアは中を見なくても後悔はしませんが、サン・パウ病院は見なければ後悔します。

 

サグラダファミリアから北へ斜めに伸びる「ガウディ通り」を15分ほど歩くと、そこに今回紹介するサン・パウ病院があります。街の街区に対して斜め45度傾けて作られたその区画は、1902年〜1930年に建築された医療庭園区画です。全体設計を行ったのはリュイス・ドゥメナク・イ・ムンタネー(モンタネールとも)、カタルーニャ音楽堂を設計し、バルセロナではガウディと並ぶ建築家の一人です。当時のヨーロッパとしてもかなり先進的な医療思想のもとに建築されたこの医療庭園は、なんと患者一人あたり145平米の空間(もちろん共有空間として)を提供するべく作られました。3LDKのわが家の2倍以上の空間ですよ!

では、中を見ていきましょう。 

DSC02083

入り口正面に位置する事務棟です。外からはこの建物しか見えません。門を入って右に進むとチケットオフィスがあります。サグラダファミリアなどと違って、予約は不要。チケットを買うときに「日本人?」と聞かれたのでそうだと答えると日本語で書かれたパンフレットをくれました。フルカラー32ページの冊子で、これを読むとこの病院の歴史、建築、意義、現在などがわかるようになっています。20年くらいによくみられた海外のへんてこな日本語パンフレットとかではなく、きっちりとした意味の通る日本語で書かれており、組版も美しいものです。こういう冊子は他の国や観光地ではまず見られないので、大事に持ち帰りました(この時点でかなり好印象)。

 

DSC02156

サン・パウ病院の全景です。入り口を入ると、まず地下を通って進み、写真の真ん中あたりにある白い円形の部分(螺旋階段になっている)から地上にあがります。これは建築当初からのもので、すべての建物は地下通路で繋がっているそうです。地上に上がるとスタッフが英語かスペイン語で内部が見学可能な場所を教えてくれますので、あとは自由に行動できます。14:00過ぎに入ったのですが、見学者はまばらでその分じっくりたっぷり堪能できました。

 

DSC02089

病棟の一部です。サンルームや図書室が設けられており、地表には新鮮な空気と湿度、日陰を提供するため樹木(果樹)がたくさん植えられています。建物の素材は煉瓦とテラコッタで、非常に明るい作りです。

 

DSC02103

こちらは区画の中央に位置する建物で、治療棟だったかと思います。

 

DSC02119

DSC02101

しばらく、このあたりに座って日光浴していました。周りの緑のせいか、空気がとても気持ちいいのですよね。 

 

DSC02100

DSC02118

DSC02130

DSC02129

診療棟?と思われる個室が複数ある平屋の内部です。やはりテラコッタが美しいです。

 

DSC02170

ここから、正面に位置する事務棟内部です。入り口には"SALVE"の文字が。事務棟には修道院も併設されていたとのことで、他の館にもまして装飾がすごかったです。

 

DSC02164

会議室とおぼしき部屋は床一面がタイル細工でした。

 

DSC02161

ここから先は、もうぽかーんとしてしまって、その美しさ、緻密さにただただ圧倒されていました。

 

DSC02149

DSC02145

DSC02141

DSC02146

ちょうど窓の先にはサグラダファミリアが見えます。こんな美しい都市景色が見られるとは、思ってもみませんでした。道の先に見えるのがあの教会とは。ここに入院していた人々の日々の安らぎが想像できるようです。

 

DSC02162

DSC02142

DSC02134

DSC02159

DSC02157

DSC02168

音響設備を備えた講堂のような場所が用意されていました。現在は、国際連合大学やWHOなど、7つの世界機関が入り、この地区を知識と教育の場として利用しているとのことです。

 

DSC02108

街区に隣接する場所にもモダニズム建築があり、大学の建物のようです。

 

DSC02174

気がつくと、1時間半あまりを過ごしていました。夢中でした。 出るとき、何度も振り返って見上げました(さすがスペイン、空が青い!)。立ち去りがたい気持ちでいっぱいでした。自然と「神の恩寵...」という言葉が思うかびました。

いやー、すごかった。とてつもなく、すごかった。サグラダファミリアの余韻冷ましなんてとんでもない。余計に興奮してしまって、このあとどっと疲れました。でも、こんなに心地いい疲れがあるなんて、思ってもみなかったので、本当に来てよかったです。私的にはサグラダファミリアよりも感動したと思います。。

これからバルセロナに行かれる方には是非訪れて欲しい場所です。バルセロナを再訪する方にもおすすめします。

 

あ、前回予告していたFCバルセロナのショップの話は次回に。