美術古本コント指圧読書(その2)

前回は東京へ行って、神保町で結局新刊書籍を買ったところまででした。

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今回は後半戦、と言ってもまだ一日目は終わっていません。これから1日目のメイン「明日のアー」を観劇するのです。 大井町にあるいつものホテル(コミケのときに宿泊し始めて、早20年)にチェックインして、着替えて少し休憩。ずいぶんと汗をかいていましたので。18:00開演に合わせて、17:00に大井町を出発して品川乗り換えで山手線で原宿を目指しました。

「明日のアー」というのはデイリーポータルZのライター大北さんが主宰し、脚本・演出・出演するコント集団で、役者さん半分、別に本業があり演技は素人である人半分くらいで、過去4年間くらい活動してはります。第一回と第二回公演は大阪や京都でも上演されていて、第二回公演の「猫の未来予想図II」を京都の旧立誠小学校へ見に行ったことがあります。

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地方公演は交通費や宿泊費がネックだと思われ、第三回公演からは東京のみになったので、よしこれは見たいものは自分から行くしかないのだ!と決意して、今回の第四回公演「観光」を見に行くことにしたのが、そもそものこの旅行の発端なのです。

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さて、その会場が原宿のVACANTという場所でして、じつはあまり場所を調べずに山手線に乗っておりました。地図的に駅からすごく近いのですっとつけるだろうと。山手線は祝日の夜だからか激混みで、その時点でかなり萎えていたのですけど、駅を降りての人だかりにああ、やっぱり苦手だなこの駅と思いました。そこからgoogle先生の示した裏道を通って歩いたのですが、人が多すぎて前に進めないという事態に。流れてはいるんですけど、みんな歩くのが超遅い。抜かそうにも人が多すぎる。あれ、これ間に合わないかも...と焦りはじめました。あとで調べたら、これが竹下通りという両側にお店が立ち並ぶ一番原宿らしいところだと知りました。いや、何回も東京には来ていますが、表参道は歩いたことはあっても竹下通りを歩いたのは初めてだったのです。。いやー、あれはきついです。人が多すぎる。毎日が祇園祭宵山みたいな場所じゃないですか。酸素が足らない。。

さて、ともかくもなんとか頑張って、会場についたのが開演15分前で、だいたい満席。予めチケットをLivePocketで予約購入していたので入れないということはなかったのですが。客席と舞台の区切りがないスペースで、この近さは合唱でもなかなかない距離感。と、しばらくすると大北さんが登場し、前説を始められました。上演中は当然撮影禁止だけど、これから「観光」の本場、奈良からやってきた鹿が登場するので、それは撮影しても良いとのこと。そして、鹿に餌あげたい人いませんか?と草みたいなものをくばりはじめました。はて?

シカ登場!

シカは人間に近づいて、餌を食べ始めました。時折、威嚇なども。可愛い...?いや、可愛いぞ。途中から、脳が麻痺してきました。

シカを演じるのは京都が生んだ大俳優、宮部純子さん。いや、この人すごいんですよ。「猫の未来予想図II」のときに度肝を抜かれました。間近で見る俳優さんの演技って、こんなにすごいのかと。その変幻自在っぷりをいきなり見せつけられたオープニングでした。

以降、約100分にわたるコント、本当に笑って笑って、笑いっぱなし。ものすごい密度の濃い「変」。日常の中にある変、非日常の中にある日常の変。ブラックコメディの変。細かい細かいディテールの中にある可笑しみを丁寧に丁寧に拾い集めて濃縮還元したおかしさを、これでもか、これでもかと突きつけてくる。ラーメンズのコントで、あまり頭を使わずにノリと勢いだけの作品があるでしょう。あれが、ずーっと続くのです。でも、ときどき理性が戻ってくるみたいな。声が変、動きが変、演技が変。ああ、こんなにおかしてくて楽しくひたすら笑っていていいのか?いいのだ!見ている方も笑いのアスリートみたいになっちゃって、演技するメンバーと一緒に走っているみたいで心拍数があがるのでした。

宮部さんは安定のおかしさ。モデルの7Aさんは相変わらずの「普通の狂気」がすごい。しかし、この二人を上回る狂気がありました。イラストレーターで明日のアーのチラシデザインを手がけている"よシまるシン"さん。なんだろう怪演というのも違うというか、よシまるさんだけ別の次元にいる存在みたいで、この世の中のルールがまったく通用しない無敵の存在みたいな狂気がどのコントでも漂っていて、怖いくらいでした。あと、トリプルファイヤーのボーカル、吉田さんの張り詰めない狂気もすごかった。DPZ編集部の藤原さんはもう貫禄っぽいものまで出ていて、しっかりした演技。というか普段のプープーテレビとかで見る藤原さんは素で何かの演技をしてるんじゃないかと思う。そんななか、張江さん、八木さんの演技と声が狂気の中に安定をもたらしているかのような感覚。

そうそう、明日のアーの音楽は左右という2人バンドの楽曲が使われているのですが、ときどきこの二人が舞台の左右に分かれて、生演奏するんですよね。これがむちゃくちゃかっこいい。バンドの生演奏ってこんなにびしばし身体で感じるのかと。そして、この二人は役者としても出演しているという。花池さんのクールさ、桑原さんの大きな声と演技は勢いだけじゃないものがあって。あとでiTunesで左右のアルバム「スカムレフト・スカムライト」を買いましたよ。物販でもTシャツを買ってしまった。

そして、今回の明日のアー、最大の衝撃はシティボーイズのきたろうさんが出演するということ。え、なんで、ここにきたろうさんが?いや、でも目の前にいるのは確かにきたろうさんだわ。TVとか映画で見る、コントやっているきたろうさんだ。本物だ。何本目かのコントで登場したきたろうさん。何より、他の人と声が違う。宮部さんでもかなわない声。そう、舞台でずーっとやっている人特有の独特の発声。第一声だけで場の雰囲気を掌握して、その空間に引きずりこまれてしまった。わたしはこの声を知っている。関西で活躍されている俳優二口大学さんと同じだ。合唱団葡萄の樹の合唱劇の出演や演出で聞いたことのあるあの声と同じだ。演劇人の持つ深くて、張っていて、どの客席にもしっかり届く声だ。何を言っているのかはっきりわかる声。すごい、見た目のオーラとか全然ない普通のおじさんみたいなきたろうさんの声にすっかりやられてしまった。そのきたろうさんが、大北さんの脚本のすごく細かい笑いを演じている。そう演じている。ああ、これがコント。ちゃんとしたコント。面白い、すごく面白い。にじみ出るおかしみ。すごい。。。。。。これがコント。

2年前のことだからだと思うのだけど、第二回公演の「猫の未来予想図II」のコントの演目、細かいところはもう覚えていないのだけれど、大きな部分でも実ははっきり覚えていないのだ。とてもおもしろかったのに、あれだけ笑ったのに。でも、この第四回公演の演目はあれから2年前に比べたら近いから当然だけど、それでも二週間以上経ってもまだそれぞれをかなり鮮明に覚えている。細部がかなりくっきり鮮やかに脳内に思い出せる。大北さんの脚本が変わったんだろうなと思う。観客の記憶にすごい残る笑いになっているんだろうと思う。笑いの打率がすごく上がっているんだ、たぶん。そして、演じている皆さんの演技も狂気も進化しているのだと思う。

個人的には冒頭の鮮マ列車(三重まで「新鮮なマクドナルドを売りに行く」行商専用の近鉄電車)の宮部さんの語り、きたろうさん出演の作品、あとドッグランの振り切れ加減が好きでした。戦争のコントの桑原さんもすごかったな。あれはすごい脳に直接ささる。

見ていない人にはなんのことかわからない断片的な感想ですけど、来年の公演は見に行った方がいいです。日常に笑いが足りない人に特におすすめです。

あ、明日のアーだけで長くなったので、2日目までいけなかった...ふしぎ指圧とfuzkueの話は次回に。