さて、ここからが実質的な旅行記のはじまりです。今回のスペイン新婚旅行の滞在地は首都マドリード、それから大都市バルセロナの2都市。そして、これらの滞在中に近郊のトレドとモンセラックへのショートトリップを予定していました。まずは、マドリードへ向かうのですが、日本からの直行便はなくどの航空会社を利用しても乗り継ぎが必要になります。今回利用したルフトハンザの場合、拠点であるフランクフルト空港での乗り継ぎを行います。じつはコレが第一の関門でした。
関門と言える要素は二つ。一つは乗り継ぎ時間の短さです。フランクフルト到着の2時間後にマドリード行きが出発するのですが、この乗り継ぎ時間が十分なのか、どうかがまず事前にわからなかったのです。フランクフルト空港は経験がありましたが、何しろ広い。そして、今までの海外旅行で乗り継ぎの経験がなかったというのもあり、どれくらい余裕があるのかがわからなかったのです。もう一つの要素は税関です。
ヨーロッパEU圏内に旅行する人は必ず耳にするシェンゲン協定というものがあります。EU内での入国審査は最初にEU圏内で足を踏みいれた国で行い、出国審査は日本に向けて最後に滞在する国で行うという取り決めです。今回の私達の場合は、往復ともルフトハンザを利用でフランクフルト乗り継ぎのため、どちらもフランクフルト、つまりドイツで行うことになります。入国・出国審査自体は普通の旅行者なら気にする必要はないのですが、これに付随するのが税関です。
ドイツの税関は厳しいことで有名で、何年か前に著名なバイオリニストがドイツ経由でEUに入国した際、そのバイオリンを事前に申告せずに持ち込もうとしたという理由で、没収されたという事例がありました。高級腕時計を没収されたサッカー選手もいたそうです。そう、ドイツはドイツ自体に入国しなくても、いったん踏みいれた者には厳格に税関申告を課しているのです。われわれのような乗り継ぎ者に対しても同じ。その申告義務は「合計で時価430ユーロ以上の金品や電子機器」です(詳しくは在日本ドイツ領事館のページを参照ください)。430ユーロということは、5〜6万円くらいですからまず、iPhone1台でアウトな金額です。これにデジカメや音楽プレーヤー、腕時計を含めれば、まず申告しない人間の方が少ないということになると思います。ちょっと、厳しすぎるし、意味があるのかと思いますが、ようは個人の持ち物ではなくドイツ国内で転売する目的の物にきちんと課税するのが本当の目的のようです。
だったら、明らかな旅行者は大目に見てもらえるかも、でも抜き打ちでチェックされて、時計や旅の記録に使うデジカメが没収されたら旅行が台無しだし、どうしよう?と思案にくれていました。で、一応、近年フランクフルト経由で入国した人のブログを参考に申告書(品物と値段、いつ、どこで買ったかを書いたリスト)を作って持参しておきました。
さて長い11時間のフライトの後、いよいよ乗り継ぎのときが来ました。結果から言いますと、1:乗り継ぎは簡単。2時間あれば余裕、2:税関検査は杞憂。ノーチェックでした。
くわしく見ていきましょう。フランクフルト乗り継ぎの流れはこうでした。
1,到着後、飛行機から出たら「conecting flight(乗り継ぎ)」の看板の方向へ進む。
2,その先にある電光掲示板で、乗り継ぎ便が何番ゲートから出るかを確かめる。
3,ABCZの4つのゲート別の案内標識を頼りにその方向へ進む。
4,途中で必ず手荷物検査場にたどり着きます。出国時と同じように、手荷物のX線検査と人間はスキャン検査を受けます。
5,その先に入国審査場があり、パスパートを出して審査を受けます。
6,その先に税関があります。申告するものがなければ緑のゲートを通過、申告するものがある場合赤のゲートを通過します。
7,そこから先は通常の空港内と同じ。案内標識に従って乗り継ぎ便のゲートへ進みます。
どうでしょう箇条書きにすると敷居が高そうですが、実際は案内標識通りに進んでいれば、まず間違えることはないし、案内標識自体も大阪の地下街と違って分かりやすいです。重要なのは、1のところです。乗り継ぎをしないで、そのままドイツ国内に入る人の流れに乗って付いていかないことです。必ず、conecting flightの方向へ進むこと。これでまず大丈夫。フランクフルトで乗り継ぐ人は多く、周りに日本人がいればその会話からチェックしましょう(ドイツ国内にフランクフルトで入国する人は逆に少ないかも)。
時間にして、1〜6までは30分以内には済みます(あ、でもオフシーズンだったからかも。夏休みシーズンだと4,5が混む?)。7に関しては、自分の乗る次の便のゲートがどれだけ離れているかによります。一番近くても5分、もっと離れたところだと2,30分くらいはかかるかと。最初に書きましたが、なにせ広いので小走りに移動しているとかなり疲れます。動く歩道が設置されているので、これに乗るのが良いです。あと、身体が不自由な方や高齢者の方を運んでくれる電気自動車がスイーっと走っているので、該当する方は乗る方がいいでしょう。歩く人はこの電気自動車にひかれないように気をつける必要あり(音がしないので気づかない)。
なので、2時間あれば余裕でした。われわれはゲートについてから搭乗まで1時間の余裕があったと思います。
ちょっとひっかかったのは4の手荷物検査。手荷物は問題なかったのですが、人間スキャンでわたしはひっかかりました。原因は服の下に巻いていた腹巻き式のパスポートケース。パスポートは外に出していたのですが、これを念入りにチェックされました。ズボンの内側へも手を突っ込まれました。また、ズボンのポケットの中のものはハンカチといえども全部、手荷物検査の方へ出せと言われました。日本出国時は金属類以外はひっかからないのですが、ここでは身体の周りを巨大な装置で全周スキャンされるので、服以外なにも身につけないのが良いようです。パリでのテロ事件直後でしたから、余計に厳しかったのかもと思いました。あと、ブーツ状の靴は脱がないとダメかも。
さて、問題の6の税関ですが、緑の方を通った方が賢明と判断しました。で、実際呼び止められることもなく、すんなり通過できました。赤の申告ゲートの方には誰も係官がいなかったこと、赤のゲートのすぐ側に別室があり、そちらへ連れ込まれるとかなり面倒な雰囲気がしたこと、しばらく観察して自主的に申告するような人が誰もいなかったことで「正直に申告する方が返ってやっかいなことになりそう」な雰囲気がしたことが理由でした。たまたまだったのかもしれませんが、あきらかにツーリストで新婚旅行とわかるわれわれが、カメラやスマホを持っていることを理由に税関審査するのは時間的、人出的にも無駄だろうということがあったと思います。一人旅で手荷物がやけに大きくて、挙動不審で、アジア人(高価な電子機器をたくさん生産している国が多い)だともしかすると、危ないかもしれないなーとは思いました。なので、責任は持てませんが、コンパクトデジカメとスマホ、音楽プレーヤーくらいの所持なら臆することなく、総額430ユーロをこえていても、緑ゲートを通過する方がいいのかもしれません。高級一眼レフとかを目に付くように首から提げていたりしなければ。
(つづく)
フランクフルト、乗り継ぎ時の手荷物検査場の直前の吹き抜けの場所。