淡路島旅行(1)大塚国際美術館へ<その1>

結婚2周年の記念旅行で淡路島へ旅行に行ってきました。最初は近場で温泉に入れればいいくらいの気持ちだったのですが、車で行くなら行動範囲も広がるので近場の観光も入れようと思って、かねてより行きたかった大塚国際美術館に行くことにしました。正確にはこの美術館は大鳴門橋を渡ってすぐにある徳島県鳴門公園の中にあります。

明石海峡大橋大鳴門橋を渡って鳴門北ICで下車、そこから下道を5分も行くと大塚国際美術館が見えてきますが、ここでは車は止められません。そこからさらに500m先の海沿いの専用駐車場(無料)まで行きます。吹田のわが家を出てから、駐車場まで乗車時間ちょうど2時間でした*。

*途中、淡路SAで一回休憩。このルートはこれで3度通っていますが、いつも満杯なので入れたのははじめて。

*金曜日の朝8:00出発だったのが大きいです。余談ですが、平日に休みを取ったのは宿代が土日の宿泊より安いから。

駐車場に入るときにもらった駐車券は美術館内で無料処理を受けないといけないので持って行きます。ここから美術館まではピストン輸送のシャトルバスに乗って3分ほど(これも無料)。乗車するときちんと「シートベルト着用お願いします」のアナウンスがありました。先ごろの東名自動車道でのバス事故も記憶に新しいので、短距離で面倒でも締めましたよ!

正面入口にはチケット自動販売機2台(現金のみ)と対面のカウンター2箇所(現金、カード)がありました。10:45くらいの時点では誰も並んでおらず(開館は9:30)。お昼12:00前後になると急に館内で団体さんが増え始めたので、平日でも遅めに行くときは事前に前売り券を買った方がいいのかもしれません。コンビニのチケット発券機で全国どこでも買えるらしいです。当日券は一般3240円、大学生2160円、小中高生540円。高いか安いか。見る前はちょっと高いなーと思っていましたけど、見た後というか「体験」した後は、相応な値段だと思いました。学生料金がかなり安いのはいいことですよね。

そうそう、そもそも大塚国際美術館って何の美術館?という説明をしてませんでしたが、古今東西の美術品の陶板複製画を展示する美術館です。陶板は陶器でできたタイルですね。大塚製薬のグループ会社に大塚オーミ陶業という会社があって、徳島の砂を使ってタイルを作っています。建築用だけでは売上が伸びないということから、美術用の大判タイルを手掛けたという経緯があるようです。このあたりパンフレットやウェブに詳しく載っているので一読をおすすめします。

で、ようは「複製画」で名作と呼ばれる絵画を見るだけなんだ?それは本当に行って見て面白いのかな?と最初は思っていたのですよね。他の美術館の展示とどう違うのと。ただ、それにしてはトリップアドバイザーなどを含むネットでの評価がものすごく高くって、展示規模も1000点を超えていて、入場料も美術館としては国内最高額くらい(?)というのは、ただの複製画展示ではないぞということを漂わせていて、じゃあ確かめてみたいと思っていました。こうやって入口まで来ても、まだ少し迷いがありました。

チケットを買って入口に入るとなが~いエスカレーターがありました。階数で3、4階分くらい登ったでしょうか。着いたところはB3フロア。登った先が地下3階で、展示はB3、B2、B1がメインで1Fにレストランと系統展示、2Fにも少し系統展示があるというった具合。瀬戸内側から見たとき山の中に溶け込むように建物を作り、展示室の大半を地下に作ることで景観に配慮した構造になっていました。

さて、B3フロアに足を踏み入れると展示がすぐに見えてきました。

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システィーナ礼拝堂の天井画と壁画をまるごと再現したホールでした。これは圧巻です。単なる複製じゃないくて、その美術品があった場所の雰囲気まで再現しようとしているわけです。そして、それはこのシスティーナ礼拝堂だけではなかったのです。

最初に書きますと、この美術館の真髄はこのB3にあると個人的には思います。B2にはルネッサンス絵画、B1には19世紀絵画の名品がずらりと並んでいますが、それらよりも何よりも、このB3の古代絵画、中世絵画を全部見るべきです!全館を見るのはものすごく目も脳も身体も疲れます。絞ってみるなら断然B3!エル・グレコとかフェルメールのようなキャッチーな絵画もB3にはありますけど、そこはおまけです。

われわれも最初から知っていたわけではなく、パンフレットを見てこの絵とこの絵を見ようと的を絞っていました(スペインのプラド美術館で得た教訓。。)ただ、その経路上B3はわりとぐるっと展示室を通らないといけない構造になっていて、結果的にB3フロアの素晴らしさを知ることができました。

*なお、写真撮影可です。

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スクロヴェーニ礼拝堂

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マルタン聖堂

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オルファノス聖堂

これらは中世のキリスト教会の壁画を空間ごと複写した「空間」です。システィーナ礼拝堂よりも感動しました。これが陶板だってこともわからないし、複製であるってこともまったく気にならなくなってしまいました。空間を再現するということにかける熱意に圧倒されました。

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秘儀の間の壁画。ここも空間全体の再現で、古代ローマのもの。妊娠を望む女性が密かに入信したというディオニソス神信仰の「秘儀」が描かれています。

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今回、夫婦とも一番感動したのはこの鳥占い師の墓。最初見て、帰りにもう一度見に行きました。古代エトルリア人の墓で、本物は世界遺産に認定されながらも非公開とのこと。墳墓の形(地下に降りてきて、墓室があるという構造)を再現した上で、墓内部の壁画が描かれています。

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聖テオドール聖堂。奥まった場所に離れてあったので、われわれも最後帰る段になって、見ていないことに気づいて行ってみたら、もう声も出ないくらい驚いて。ここまで来ると、もう完全に現地で遺跡そのものを見ているかのような気持ちになってしまいます。

どうでしょうか。ここに紹介した「空間の再現」。単なる複製陶板の展示じゃないってわかっていただけたのじゃないかと。B3こそが真髄というのは大げさじゃないでしょう?ここで見た展示を受けて、じゃあいつか現地で本物を!という気持ちになるという方もいるかもしれません。それはそれで本当にこの美術館の役目のひとつでもあると思います。ただ、これらの実物は当然、世界各地に散らばっているので、実際に全部を見て回るのはかなり難しい。時間とお金と体力の問題ですよね。そこまでの情熱があるか。それが歩いて移動できる範囲にこれだけ集積されていて、模擬とはいえ空間を体験できるということはものすごいことじゃないかって思うわけです。先程も書きましたが、この場に来ると本物か複製かというのがわからなくなるのです(必ずしもすべての複製や、ましてや贋作を肯定するものではなく)。

 

もう少し、紹介したいことがあるので、続きます。