Polo 6cからGolf 8へ(3)きっかけと決め手

 どのクルマに乗り換えるかの検討を始めたものの、どのタイミングで乗り換えるかについては漠然としていて、ずっと検討中みたいな状態が続いていました。Polo 6cを下取りに出すか、自分で中古車店に売りに出す必要がありますが、買取相場・手持ち資金・Polo 6cの残債との兼ね合いを見比べていて、まぁ年明けくらいから真剣に考えてもいいかくらいな感じでした。

 動きがあったのはPolo 6cの1年点検です(この時点で車検一年前)。ディーラーさんに行ったときにショールームにGolf 8があったんですね〜。ちょうど日本発売から2ヶ月くらい経っていて、Golf 8だけでなくGolf 8 Variantも発売されていた時期です。点検を待っている間にお店の方との世間話の合間にGolf 8良いですねーと言ったら「待ち時間の間に試乗されますか?」と言われて。そう、自分から試乗しに行くっていう気持ちが全然なかったんですよね、それまで。そのころにはYoutubeやWeb記事で結構情報を見ていたのですけど。

 そこで初めて乗ったのがGolf 8 R-lineです。Golf 8は1.5lターボエンジンのR-line, Styleという上級グレードと、1.0lターボエンジンのActive, Active Basicの下位グレードに分かれています。グレードによって先進安全装備にほとんど違いはなく、外観もメッキの加飾のありなしくらいの違いなので、Golf 8のグレード選びは実質的にエンジンの排気量の2択と言ってもいいと思います。

 まず、シートに座った感触がすごくいい。R-line, Style, Activeはそれぞれシートが違うんですけど、R-lineはヘッドレスト一体型バケットシートなので包まれ感がすごいです。もう、これだけで「気持ちいい」。これクルマ選びで、わたしは気にするところです。性能や装備も重要だけれど、最終的なポイントは官能に訴える部分があるかなんです。目で見て、手で触って、座って感じるもの。耳から聞こえるもの。ハンドルから感じるもの。それらすべて。ああ、いろいろ脱線しますが、先へ。

 横に担当営業さんに座ってもらって10分間の固定コースを走ることになりましたが、車内が静かです。1.5lのエンジンの音はわずかにします。Youtubeとかで見ていたレビューでプロ・アマ問わず全然聞こえないという声が多かったですが、これは正確ではないと思います。「ああ、ここにでっかいエンジンの存在があるなぁ」というのはなんとなく車内でもわかりました。エンジンらしい音とか振動は一切ないのです。それは不思議ですが本当にそうで、きれいに遮音されています。ただ、「すごく低い周波数のごく低い音圧」を感じました。影?みたいなものでしょうか。音楽をかけていたり、40km/h以上くらいで走っているとロードノイズの方が大きいのでたぶん存在がわからないと思います。

 Golf 8 R-lineの静かの範疇はさらに広くって、歩道から道路へ出るときの段差をほとんど感じない足回りもその要因です。コトンとも音が立たない滑らかさ。荒れた路面やわずかな段差を気にせずに進んでいきます。ドスンという突き上げも一切ないです。走り始めるとスーーーーっと伸びていく。(先程書いた「影」は別として)エンジンのうなりみたいものが低速から巡航スピードまで、全然聞こえないのです。怖いくらい静か。そのせいか、気をつけないと本当にすぐに制限速度に達してしまいます。また、むちゃくちゃ安定しているせいか、体感のスピードと実際のスピードにずれがあるんですよね。Polo 6cで慣れていた体感速度は、もっと外界と近いものでしたけど、Golf 8 R-lineは隔絶されているとすら言える。

 とにかく、その滑らかさにびっくりしっぱなしで、気がつくと試乗コースが終わっていました。あとでよく考えると、VWの変速システムDSG(ダブルクラッチ)の低速時のギクシャク感(ダブルクラッチの宿命みたいなもので、慣れとコツが必要)が一切なかったことや、Polo 6cより大きめなのに、大きいクルマを運転しているという感覚がなく、とても運転しやすかったこと(運転そのものの仕方が、大きさの違うPolo 6cとGolf 8でなんら変わるところがないって、よく考えるとすごい)が思い出されて、やや、狐につままれたみたいな感じになりました。そして、あまりの上質感にこれはPolo 6cとは格が違いすぎるのではと思い始めました。言い換えると「身の丈にあってないのではないか」と臆病になったわけです。

 ただ、このときのわたしはわかっていなかったのですが、この走りの上質さを生み出している基本の部分は、「MQB」というVWの自動車の基本骨格システム(プラットフォームとよく言われます)によるところが大きいようです(もちろん、Golf 8ならではのチューニングもあるのですが)。MQBはPolo 6cでは採用されておらず、Golf 7以降から採用されたものです。後日、New Poloベース(つまりMQB採用)のT-crossを試乗したときにわかったのですが、クルマから感じる剛性感や走行の上質感はMQB世代以降では全然別ものなのでした。MQBは8年くらい前にできたプラットフォームなので、いまさら感がありますけど...。

 

 さて、以上がきっかけで、もうちょっと続きます。表題にあるように決め手の話。この試乗のあとくらいに、VW正規ディーラーであるVW江戸川さんによるYoutubeチャンネルを見たのです。「Golf 8, Golf 8 variantの納期がものすごく長くなっていること(半年くらい)」「T-crossは在庫が潤沢にあること」「買い時を逃さないでほしい!(モデルイヤーチェンジ前で安いから)」という基本的にT-crossをおすすめする回でしたが、クルマを買うときのメッセージとしてすごく重要なことを言っておられて、「情報収集する期限を決めて、いつクルマを買うと決めないと(どんどん新しいクルマが出たり、アップデートされるので)、いつまで経ってもクルマ買えないです」という、結構過激?!なのものでした。在庫を売りたい!という部分を包み隠さず述べておられたので返って好感がもてたのもあり、かなり素直に受け止めました。いつか買う、ではなく、今時点で買うと決めようと。←この時点ではGolf 8にするかどうかはまだ決めかねていました。

 最初の試乗ではGolf 8 R-lineに乗りましたが、最終的に選んだのはActiveでした。それはなぜか??最初にGolf 8のグレード選択は1.5lか1.0lかのエンジン選択であると述べました。後日Activeに試乗してわかったことですが、これがもう明確に違うエンジンでして、いやエンジンどうこうよりも、クルマそのものが全然違うと感じたのです。Golf 8とは言っても、別のクルマじゃないかと思うくらいの重要な違いでした。1.5lが好きか、1.0lが好きかというそういう違いです(次回につづく)

 

【注釈】
*R-line, Styleにはサンルーフ+harman kardonのスピーカーシステムがつけられるが、Active, Active Basicにはつけられない

*Active Basicはナビパッケージ、テクノロジーパッケージ(iQ.Lightやヘッドアップディスプレイ)が付けられない。また、スマートキーと後部座席のエアコンがない。なお当初、このモデルは受注生産でしたが、2021/12時点ではカタログモデルになっています。Golfというクルマを知るには値段的には一番オトク。ただ、このグレードは多分まだ日本には入ってきていないと思われます。

*目玉装備であるTravel Assist(同一車線内維持+全車速域対応アダプティブ・クルーズ・コントロール)や、歩行者・自転車対応自動ブレーキ、車線変更時死角警告などは全グレード標準装備という太っ腹(というか、安全面で機能差をつけないのはクルマメーカーとして至極真っ当だと思います。VWエライ)

VW江戸川さん、VW和光さんはVW正規ディーラーのなかでは、かなりの更新頻度と熱情でYoutube動画をあげておられます(どちらもVWドイツ直系の販売店です)。ディーラーさんなので、クルマの基本的な情報が正確なのがいいところですが、単純なコマーシャル動画とは違う、不思議な親しみやすさがありおすすめです。

VW江戸川chのGolf 8 Active試乗動画

youtu.be

VW和光chのGolf 8 R-line試乗動画

youtu.be