GW初日、近代建築を二カ所巡ってきました。まずは武庫川女子大学甲子園会館。ここは1930年に竣工した旧甲子園ホテルと呼ばれた場所で、かのフランクロイドライトの弟子である遠藤新が設計をした近代建築です。現在は武庫川女子大学の建物となっており、この中には建築学科のドラフトルームや教室も設けられています(なんという贅沢!)。見学は事前の申し込みが必要です。
内部の意匠は正しく、フランクロイドライト様式を継承しています。東の帝国ホテル、西の甲子園ホテル(帝国ホテルの7年後)は兄弟のような関係にありますが、微妙に異なっています。甲子園ホテルにはライト自身は一切関わっていません。が、ホテルをプロデュースしたのはどちらもホテル業界の第一人者、林愛作。両ホテルの施工に携わったのが遠藤新です。微妙に異なるのはまず材料の点。
帝国ホテルはスクラッチタイル貼りで栃木の大谷石を多く取り入れていますが、甲子園ホテルはボーダータイル貼りで凝灰岩の一種である小松の日輝石を使用しています。材料でも東と西に分かれています。
もうひとつ違うのは甲子園ホテルは和洋折衷である点。
障子貼り格子の天井の他、欄間や提灯のような意匠が多く使われています。当時としては斬新な洋室と和室からなるスイートの部屋があったそうです。
ライト様式では1つのモチーフを繰り返し使いますが、甲子園ホテルで遠藤が使ったのは「打ち出の小槌」。そして、そこからこぼれる「玉」があちこちで使われています。玉とはすなわちお金ですよね。このあたり関西財界らしい(甲子園ホテルのスポンサーは阪神電車)。
バーの床には京都の泰山製陶所のタイルのモザイクがあります。この床に限っては設計図がなかったそうで、現場で職人さんがモザイクを作ったとのこと。
中央ロビーには六甲から吹き下ろす風が常に吹いており、庭が眺められる心地よい空間です。そうそう、あの阪神タイガースの「六甲おろし」のお披露目が行われたのはこの甲子園ホテルだったそうですよ。
甲子園ホテルが営業していたのは1930年から、わずか14年。時節が悪かったんですね、戦争へ突入していく時でした。戦争中は海軍病院に転用、戦後は占領軍のクラブハウスになり、その後大蔵省管理でほぼ放置。幽霊屋敷状態だったそうです。そして昭和40年(50年も前!)に武庫川女子大学に譲渡され、教育施設として活用されはじめました。ということは、ホテルの時代よりも長いということですね。その間、このような美しい姿で保存・活用・保全(耐震工事済み)されているということはとても素晴らしく、ありがたいことです。。見学日にはこうやって見学(ガイド付き)もさせてもらえるし。
見学は無料ですが、日時指定があり武庫川女子大学甲子園会館のHPでカレンダーが公開されています。庶務課へ直接電話をして日時、人数を伝えます。1回90分程度で、建物の内外を案内していただけます。写真撮影は可ですが、学生さん(建築科)を写すのはNG。場所はJR甲子園口から徒歩10分。
さて、おなかいっぱいという程堪能したのですが、このあともうひとつ別の建築を観に行くことにしました(つづく)