今年買って読んだ本からよかったと思ったものをセレクトしてみました。結構悩みました。今年はあまり小説を読んでおらず、社会学やグラフィック関連の本をよく読んでいたように思います。順不同にご紹介。
【人文社会部門】「女の子は本当にピンクが好きなのか」(堀越英美著、Pヴァイン刊)
【画集部門】「イラストレーター安西水丸」(クレヴィス刊)
【図鑑部門】「街角図鑑」(三土たつお編著、実業之日本社刊)、「よきかなひらがな」(松村大輔、大福書林刊)
【図録部門】「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密」、「文字の博覧会 旅して集めた"みんぱく"中西コレクション」
【エッセイ部門】「負ける技術」(カレー沢薫著、講談社文庫)
小説をのぞいて、この中からベストを選べと言われると「女の子は本当にピンクが好きなのか」を選びます。この本には本当に蒙を啓かれた思いです。昨年読んだ「反知性主義」(森本あんり著、新潮選書)と同様に現代社会の問題(それを問題と思うかは人によって違うのでしょうが)を、それに至る歴史を丹念に掘り起こすことであきらかにしていくため大変に説得力があります。
【小説部門】
1位「火星の人」(アンディ・ウィアー著、小野田和子訳、ハヤカワ文庫)
2位「コンビニ人間」(村田沙耶香著、文藝春秋刊)
3位「横浜駅SF」(柞刈湯葉著、KADOKAWA刊)
小説はこの3つがベスト。「火星の人」はマッド・デイモン主演の映画「オデッセイ」の原作です。映画化作品というと映画だけ、原作だけどちらかが良くて...というパターンが多いように思いますが、この作品はどちらもとても面白い。
火星探索でひとり取り残された主人公が火星でサバイバルするSF小説ですが、その内容はまったく現在の科学技術の延長で、科学知識、とりわけ化学の知識がないととても生き残れないということを思いしらされます。あとユーモア。火星にひとりぼっちでいてユーモアがなんの得になるって思うかもしれませんが、精神がまいっちゃうと生きる気力なんてわかないんだってことをこの小説は本当によくわからせてくれます。悲壮な決意とかいらないんですよね、火星とか宇宙とか残酷な世界には。
原作小説はとにかくディティールが細かいです。それに対して、映画はその細かさを映像のディティールで見せることで原作の圧倒的な文章量を2時間の中に凝縮していて、ちっとも原作の良さを損なうことなくうまく省略しています。どちらから先に見ても、読んでもどちらもちゃんと面白いなんてすごい!ただ、原作小説は文系一辺倒のひとだと理系知識を「読む」のが苦痛になる場合があるかも。映画はそのへんをちゃんと理解してなくても、組織論とかマネジメント、仕事論の観点での見せ場があるので、NASA版「プロジェクトX」あるいは「プロフェッショナル仕事の流儀」のようなドキュメンタリーを見る姿勢で見られるのが良いかなと思います。
ひとつひとつの本について語るとキリがないので、このへんで。