新しい美術館「中之島香雪美術館」へGO

気がつけば早くも4月中旬で、うかうかしているとすぐに5月の大型連休がやってきそうです。今年も連休は日帰り旅行をいくつかするつもりで、いろいろと行く場所をしらべていたのですが、候補として考えていたのが御影にある香雪美術館。近代建築の洋館と日本建築の和館を持つ日本画や茶器、刀剣を収集した美術館です。で、公式サイトを調べていると「中之島雪美術館」という文字が。どうも知らない間に別館ができていたようでよく読んでみると、うーんとなになに2018年3月21日開館?!つい最近じゃないですか。よーし、ならばまずはこの別館に行くぞーと決めて、午後からでかけてきました。

なぜ別館に先に行ったのかというと新しもの好きかつ、アクセスが良いからです。本館の御影は、阪急神戸線沿線で北摂の吹田からだとやや遠く、ショートトリップな感じだから連休にとっておこうと。対して、中之島香雪美術館は文字通り大阪は中之島肥後橋、旧朝日新聞社ビルの跡地に建てられた「フェスティバルタワー・ウェスト」の4階に立地。大阪駅から歩いて10分足らずの距離なので、これだと週末の買い物がてらという気安さで美術館に行くことができます。いや、実際大阪だとこういう都市の真ん中にある美術館って、あべのハルカス美術館くらいしかなくって貴重なんです。

左がフェスティバルホールがある中之島フェスティバルタワー。数年前に旧フェスティバルホールのあるビルを建て替えて高層建築に。右側が今回行ってきた旧朝日新聞社社屋ビルを建て替えてできた中之島フェスティバルタワー・ウェスト。この写真はタワーの北側である堂島川側、渡辺橋から撮影しています。

こちらはタワーの南側にある土佐堀川方面。斜め向かいに見える近代建築は三井住友銀行大阪本店です。このビルがまたかっこいいのですよ。

このあたりはビルの合間すれすれを阪神高速が駆け抜けていくので、スリリングな感じです。実際クルマを走らせてみると気持ちいいです(ちょっとRがきついのでスピード感が怖いけれど)。水辺+高速道路の組み合わせは建築・土木関連の都市鑑賞家にはたまらないと思います。

フェスティバルホール側のタワーのこの足元のあたり、腰巻きのような優雅なラインでいったん区切られることで、垂直方向の高さが強調されているように思います。今回訪れたウェスト側も角地にRを描くようになっていますが、これは旧朝日新聞社ビルがそうだったので部分的に継承しているように思えました(名建築だったので建て替えが決まったときは残念でした)。

そもそもなぜ中之島に美術館が作られたのか不思議だったのですが、香雪美術館というのはそもそも朝日新聞社を創業した村上龍平のコレクションを展示する美術館(旧村上邸でもある)で、朝日新聞社ビルの跡地のビルにその別館できてもおかしくはないのでした。

さて、中之島香雪美術館、内容はというと新規開館ということで、これから5期に分け、約1年間をかけて本館所蔵のコレクションの一部を展示していくようです。今はちょうど第1期で、日本・中国の書画の名品、村上家ゆかりの刀剣、茶器(碗・茶杓など)とコレクションの広く網羅する形での展示となっていました。館内は大2、中1、小1室の展示室と、本館・村上龍平を紹介する小2室で構成されており、1時間弱くらいで見終えるくらいの広さです。大きすぎないので、手頃感(?)があります。

今回の展示では、曾我蕭白の鷹図が特に気に入りました。たぶん第1期の目玉と思います。イラスト塗りのようなメリハリがはっきりした大胆で派手な絵なのですけど、実は細かなテクニックの集大成であるというのが展示されていた解説パネルでよくわかりました。他の絵にもいくつか解説パネルがいくつか設けられていて、こういうのはありがたいですし、美術品に対する学芸員さんの愛を感じます。あとはやっぱり茶器が逸品ぞろいで眼福でした。織部の茶碗や皿の他、茶杓の名品も展示されていました。茶碗に銘がつくのは知っていましたが、茶杓にまで銘がつくとは知らず。その命銘の由来なども解説で知ることができてそれも収穫でした。

第2期がちょうど大型連休に開催されるので、また来なければ!と思っているのですが、本館でもこのような魅力的な展示が始まるので、予定通り御影の方も行かねばなりません(今年も各地で刀剣展示が続くので、刀剣女子にはたまらないでしょうね)。

そうそう、忘れていました中之島香雪美術館には大きな目玉ポイントがあって、それがこれです。

茶室がまるごとビルの4Fの美術館内に建っています。実物大模型とかじゃなくて、本物です。木材から竹から藁葺き屋根から全部、本物の茶室と同じ材料でできていて、かつ建て方も同じ。村上龍平は茶道薮内流に学び、茶への造詣を深めたそうで、玄庵という茶室を旧村上邸の敷地内に建てたとのこと。ここにある茶室はその「写し」だそうです。玄庵そのものが、薮内流の燕庵という茶室の写しということなので、「写し」の「写し」ということになります。書画・美術に詳しい人ならこの「写し」という概念がわかると思いますが、単純にコピーするというのとはちょっと意味あいが異なります。そのあたりの解説もあった方がいいんじゃないかなーとちょっと思いました。まだ真新しい木材と畳なので、ちょっと模型的に見えますが、これから年を経ることでそれらしくなっていくんじゃないでしょうか。空間演出がややチープな感じするのが少し残念でした。改善されるといいな。

チケット代は900円とややお高めなのですが、村上コレクションについては前売り券が700円なので、これから行くという方は前売りを買った方がいいです。あと、5期ともいくつもりだという人は全期共通観覧券(5回分、3000円 )がさらにお得です。

いやぁ、それにしても都会のビルの中に美術館があるっていうのはやっぱりいいです。ありがちな表現ですけど、喧騒をしばし忘れられるというのがいい。あと、美術展を見たあとにお茶したり、食事したりするのに困らないという点も重要かと。

【おまけ】
フェスティバルタワー・ウェストのすぐ近くにあるダイビル本館にも足を伸ばしました。かつての近代建築オフィスビルは外壁と内装の一部を残して建て替えられてしまいました。今もオフィスビルなんですが、中身は完全に現代ビルのそれになっています。老朽化が激しかったといいますし、オフィスビルならそれは仕方ありません。それでもこうやって往事を偲ばせる意匠をたくさん残してくれたのはありがたいです。

エントランスの丈夫にいるのはガーゴイルですかね。

エントランス脇にはヤギがいます。この過剰な装飾っぷりが魅力。

今でも、このエレベーターホール天井の美しさには息を飲みます。ここが残ったのは本当に良かった。。

中之島香雪美術館へ行かれる方は、ぜひこちらも見てください。